虚無。 6時間4分10秒。
自室の断捨離中、引き出しから見慣れない箱が出てきたので、開けてみると、中には10センチ前後の小さな白いインコがあった。以前飼っていた子で、5年以上前に亡くなったはずである。インコは微動だにせず、綺麗に乾燥して、まだ生きているかのように固まっていた。このまま大事に取っておこうか。幅の広いセロハンテープで巻いて、標本のように仕立てることにした。いざ、テープを巻きつけてみると、薄いテープ越しに手のひらに押し付けられるインコの固さが、急に気持ち悪く感じた。私は悲鳴を上げて、テープが巻き付いたインコをゴミ袋に放り投げた。 6時間14分13秒。
背丈ほどの大きさのサメを2体仕留めて帰路についた。駅中のデパートを通って帰るのだが、デパートは思ったよりも混んでおり、すれ違う人全員が、私の背中で伸びているサメを凝視している。ディズニーストアを抜けて、突き当たりのエレベーターに乗り込み、1階を目指した。1階の駐車場で降りると、私を待ち伏せていたのだろう、数人の黒服の追っ手がこちらに歩いてきた。私はダッシュで駐車場を駆け抜け、駅まで走った。背負っていたサメは、とっくに何処かに落としてしまっていた。駅を抜けて郵便局に駆け込み、郵便局抜けて、人気のない中華街までやって来た。私は露店の屋根によじ登り、テント布の中に隠れた。布の肌触りが心地良く、そのまま寝てしまった。 8時間18分50秒。
部屋に閉じこもって、フローリングに寝転がりながら、スマホでラジオを聴いていた。2人の男性パーソナリティと、稀にディレクターの声も聴こえる、3人でボソボソ会話しているだけの番組だった。BGMも効果音も無く、3人がただひたすら低く喋っているのを、1時間近く聴き続けた。 5時間40分4秒。
修学旅行で大きな神社にやって来た。砂利が敷き詰められた広大な境内を、クラスメイトたちと列を成して歩いていく。幅・高さ10メートルはあろうかという巨大な鳥居があった。その足元には、直径1メートルほどの小さなマンホールがあり、引率の先生がその蓋を開けると、底無しの闇が広がっていて、地下深くへと続く螺旋階段があった。先生は「この螺旋階段を降りて、さらに縄をつたい、鎖をつたって地下深くにある御神体まで降りると、一生分のご利益がある」と言った。クラスメイトたちは次々に地下へ降りて行ったが、私は底無しの暗闇が恐ろしくて、降りるのを拒否した。帰り道、御神体を拝まなかった私は、神社から一歩出た瞬間、全身を強烈な激痛に襲われた。 7時間52分11秒。
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