東京には名前がついている坂だけで実に1200カ所近くあり、これだけ多くの坂に名前がついている都市は、世界でもまれだという。本書は、東京23区内にある800カ所以上の坂からえりすぐりの魅力ある坂を紹介するガイドブック。 まずは千代田区。「九段坂」は江戸初期にできたと伝わる古い坂。当時、あたりは飯田町という町名で、当初の坂名も「飯田坂」だった。その後、宝永年間(1704~11年)に坂に沿って九段になった長屋が造られたので「九段」という由来が有力。一方で坂の途中の石段が九段だったからという説もあるそうで、「江戸名所図会」には、階段状に並ぶ長屋も途中の石段も描かれているそうだ。 その他、神楽坂(新宿区)や乃木坂(港区)、道玄坂(渋谷区)などのお馴染みの坂から、かつては浅間坂と呼ばれた急坂だったが、私財を投じて坂を緩やかに改修した英国人技師の名にちなんだ「ゼームス坂」(品川区)や、近所に住んでいた医