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ブックマーク / traindusoir.hatenablog.jp (75)

  • ワーク・ライフ・バランスについて(その1) - 備忘録

    キャリアデザイン学会のメルマガにある「キャリア辞典」(執筆者は荻野勝彦氏)において、「ワーク・ライフ・バランス」に関する連載が始まった。この言葉、2005年頃から急に使われるようになった言葉のようで、当初は少子化との関係で論じられることが多かったが、最近では労働法制を巡る議論が高まる中で「個人の生活全般の改善、充実といった観点からの使われ方も増えている」とのことである。ここでは、ワーク・ライフ・バランスの鍵を正規雇用者についての労働時間の短縮や労働時間・日数の多様化を図ることと考え、それが日の雇用システムに大きな変化を生じさせるものであるとみなした上で、その意義を考えてみることとする。 まず、少子化との関係から考えてみたい。合計特殊出生率の要因を①有配偶者の数と②有配偶者が産む子供の数の2つに分解すると、前者が近年の出生率低下の主因となっており、少子化問題の解決策としては、婚姻の数を

    ワーク・ライフ・バランスについて(その1) - 備忘録
  • 山田鋭夫「レギュラシオン理論 経済学の再生」 - 備忘録

    レギュラシオン理論―経済学の再生 (講談社現代新書) 作者: 山田鋭夫出版社/メーカー: 講談社発売日: 1993/05メディア: 新書 クリック: 6回この商品を含むブログ (7件) を見る1 資主義はどうとらえられてきたか 富国とは金銀を豊富に持つ国であるとする重商主義に対し、A・スミスは、富とはふつうの人のふつうの生活にとっての必需品や便益品であり、それが豊かに行き渡っている国こそ豊かな国であるとして、富の考え方を転回。また、そのように生活用品を増大させる原因こそが「分業」であり、それによる生産力の発展であるとする。 ケインズは、政府の経済的役割を重視する視点を開いたが、そこにあるいくつかの新しい着想には、一つは経済における有効需要問題の重要性という観点があり、もう一つは労働市場は他のふつうの商品の市場とは異なる特別のものだという認識がある。また、それらの背後にあるのは、市場という

  • 岩田規久男「「小さな政府」を問いなおす」 - 備忘録

    「小さな政府」を問いなおす (ちくま新書) 作者: 岩田規久男出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/09メディア: 新書購入: 4人 クリック: 52回この商品を含むブログ (52件) を見る第1章 「大きな政府」へ ヴィクトリア時代後期(1900年代初頭)の失業保険は、失業が発生した後に失業者の痛みを和らげるに止まるもの。1942年のベヴァリッジ報告は、国家は社会保険によって「ナショナル・ミニマム」を保障すべきであるが、それ以上の所得保障は人々の勤労意欲を低下させ失業保険への依存心を強くする、というもの。フェビアン社会主義の思想は、この「ナショナル・ミニマム」の保障を一つの要素とし、もう一つの要素として産業の民主的管理の思想を持つ。第二次大戦後、労働党はこの思想に則り、石炭、鉄道、鉄鋼等の基幹産業の国有化を進めた。 第2章 知られざる戦後日の社会主義革命 1973年は福祉元年

  • 間宮陽介「ケインズとハイエク 〈自由〉の変容」 - 備忘録

    ケインズとハイエク―「自由」の変容 (中公新書) 作者: 間宮陽介出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1989/01メディア: 新書 クリック: 9回この商品を含むブログ (3件) を見る第1章 喪われた世界 功利主義者は、「善い」を快によって定義するのに対し、ムア倫理学では、功利主義の前提とする「善い」の定義可能性を否定。「善い」は、直覚に拠って、直示することに拠ってしかその内容は分からず、「...である」という形では定義できない。ムア倫理学では、「善い」をある有機的統一を成している全体である、とみるが他方で、理想を最大最高の善とし、その不可欠の要素として、人間の交わりと美的享受を挙げる。 ハイエク感覚論の特徴は、感覚を外部世界の刺激が与えた感覚器官への刻印とはみず、それが神経系により識別分別され、別の秩序に変換されたものとみる点。カントは、世界を人間精神の構成物とし、世界を構成する

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  • 稲葉振一郎、立石真也、塩川伸明「所有と国家のゆくえ」(ジュンク堂トークセッション) - 備忘録

    行って参りました。内容については、いずれ活字になると思うので、ここでは概要報告に留めます。 セッションは、塩川氏の報告と稲葉・立岩氏への質問から始まり、これに対し両氏が答える、という形で進行。塩川氏は、「現存する(した)社会主義」について、もう一度考える必要性を指摘。「現存する社会主義」を中央集権・指令経済と考えるのは短絡的で、現実には、「隠れた市場」「互酬」等、末端の人間関係の中で経済は補われていた。80年代以降、市場経済の要素を併せ持つ社会主義体制への移行が志向されたが、90年代初頭の市場経済への全面的な体制移行は、いわば「逆方向のボルシェヴィズム」であり、目的が正しければ手段は正当化される、といったものであったことが指摘される。 次に、平等の概念について、「結果の平等」と「機会の平等」の二者択一の議論がされがちである現状について、両氏の考えが問われた。また分配について、大方の人はその

  • 稲葉振一郎、立岩真也「所有と国家のゆくえ」(その3) - 備忘録

    所有と国家のゆくえ (NHKブックス) 作者: 稲葉振一郎,立岩真也出版社/メーカー: 日放送出版協会発売日: 2006/08メディア: 単行購入: 2人 クリック: 11回この商品を含むブログ (56件) を見る第1章 所有の自明性のワナから抜け出す 立岩所有論において特徴的なことは、所有の主体というものが、理論の主人公としてではなく、主人公にとっての他者として現れること。これに対し、ロック=森村進流の所有理解は、働いて獲得したものは自分のものであり、自分のコントロール下におく、というもの。− 「私の身体は私の身体であるということと、身体によって生産したものが私のものであるということは命題として違う」「自分が自分から切り離して市場に供するようなものっていうのは、逆に、むしろ誰のものであってもよい」(立岩)。 この世界には、自分がいて、他者というものが存在する以上、所有という問題は逃れ

    稲葉振一郎、立岩真也「所有と国家のゆくえ」(その3) - 備忘録
  • 備忘録

    Data Visualization | Kaggle 続きを読む ケインズ 説得論集 作者:ジョン・メイナード・ケインズ日経済新聞出版Amazon ケインズの『孫の世代の経済的可能性』では、「技術的失業」という概念が取り上げられる。これは、省力化のペース速過ぎ、労働力の新たな用途を見つけ出すことができないことで発生する失業のことである。近年、AIの活用が進むことで雇用が失われることを懸念する議論があるが、これも技術的失業に対する懸念とみることができる。 一方、ケインズは人間のニーズを絶対的/相対的に二分割し、前者についは、それが満たされる時点がくる、さらに当時から百年後、すなわち2030年において経済的にみた生活水準が8倍になると仮定した場合、人間生存のためのあらゆる経済的な課題*1は解決されると指摘する。しかしその場合、問題となるのは時間の過多(聴くことはできても、歌う側に回ることは

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  • ラスカルの備忘録 - 大竹文雄「経済学的思考のセンス お金がない人を助けるには」書評

    経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書) 作者: 大竹文雄出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/12/01メディア: 新書購入: 14人 クリック: 139回この商品を含むブログ (111件) を見るⅠ イイ男は結婚しているのか? 政府が行う災害対策は、(受益者負担の原則から)地震保険への強制加入により保険の機能を利用し、より安全な地域への住むようなインセンティブを高めるため、ハザードマップを公開し、災害保険税を地域と家屋の耐震性能に応じて課す、というのが経済的に公正な在り方。災害時に事後的救済をすると、価格の安さに加え、事後的救済をあてにして危険地域に住む人をますます増やし、救済費をふくらませる。自分の息子をどら息子にしないためには、(時間非整合性を回避するため)一切援助しないことをあらかじめ宣言し実行すること。 死亡時期さえも、金銭的インセンティブによ

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  • 田中秀臣「ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝」 - 備忘録

    ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝 (講談社BIZ) 作者: 田中秀臣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/01/20メディア: 単行購入: 2人 クリック: 60回この商品を含むブログ (27件) を見る第1章 21世紀に君臨する「皇帝」の素顔 金融政策の舵取りは一般物価水準の安定を目標にすべきであり資産価格(株価、不動産価格、為替レートなど)の動向に左右されるべきではない、とのバーナンキの姿勢*1をアダム・ポーゼンは評価し、この姿勢は今後も堅持されるとみる。バーナンキは「グローバル貯蓄過剰」からアメリカの財政赤字はファイナンス可能とみるが、クルーグマンは、現在の「住宅バブル」について資金流入が突然終わる「審判の日」の到来を予測。 第2章 世界最強「バーナンキ経済学」のエッセンス バーナンキは、(ニュー)ケインジアンの立場。企業は労働者のインセンティブを考慮し、市場賃金(限界労

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  • 「パートタイム労働者の賃金」(労働、社会問題)での議論に関する備忘録的整理 - 備忘録

    問題の全景を充分に把握していない可能性は留保しつつ、取りあえずまとめてみる。「若年問題を経路」として問題提起すべき、とした意図は、中高年化しつつある「フリーター」には、階層化の傾向がみられることが背景にある。それと、以前のエントリーで触れたように、近年の景気回復局面の中においても、正規従業員は相変わらず減少し続けている。ただし、景気回復による恩恵は、新規学卒市場には徐々に現れ始めており、就職率は上昇している。 企業が将来の不確実性を意識し、正規従業員の採用に消極的になっていることの背景には、製品サイクルが短期化し、大型小売店の価格決定力が相対的に高まるなど、市場競争が激化する方向への経済構造の変化*1もあるだろう。ただし、経済がデフレからインフレ基調となった場合、商品へのマークアップが容易になり、財政・金融政策のコミットメント効果により、将来の不確実性は低下する。この場合、企業の採用意欲は

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    smicho
    smicho 2006/02/18
    無茶目な
  • ラスカルの備忘録 稲葉振一郎「「資本」論

    「資」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書) 作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/09/06メディア: 新書購入: 5人 クリック: 50回この商品を含むブログ (100件) を見る第1章 「所有」論 ボッブズの考える「自然状態」が自然権と自然法が対立し合う「戦争状態」であるのに対し、ロックの考える「自然状態」では、自然法が成立しており、相手から奪うことで失われる機会費用が大きい。そこには、「世界の広さについての想定」というエコロジカルな条件の違い。ボッブズが想定しているような状況は、「成長の限界」に達したゼロサム社会とロックがモデル化した社会との中間にある(ゼロサム・マイナスサム社会では、私的所有、市場経済という仕組みがそもそもうまく働かなくなる)。また、ロック的な状況が必ずしも安泰というわけではなく、市民社会が何らかの理由で「成長の限界」に突き

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  • ブルーノ・フライ、アイロス・スタッツァー「幸福の政治経済学 人々の幸せを促進するものは何か」(その2) - 備忘録

    幸福の政治経済学―人々の幸せを促進するものは何か 作者: ブルーノ S.フライ,アロイス・スタッツァー,沢崎冬日,佐和隆光出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2005/01メディア: 単行 クリック: 73回この商品を含むブログ (23件) を見る第7章 現行の政治経済プロセスと幸福の関係 左翼的な志向を持っている人は、インフレよりも失業に関心を注ぐ一方、右寄りの人は、失業率が上昇したときよりもインフレ率が上昇したときに、より大きな幸福度の低下を味わう。左寄りの人は、失業率1%ポイントの上昇の下で満足度を維持するには、インフレ率が1.8%ポイント低下することが必要であるが、右よりの人は、0.9%低下すればよい。 第8章 政治体制と幸福の関係 スイスの州別統計により、各州の民主的参政権に関する指数が幸福度に与える影響をみると、有意にかなり大きな影響を与えている。また、分析の枠外にお

    ブルーノ・フライ、アイロス・スタッツァー「幸福の政治経済学 人々の幸せを促進するものは何か」(その2) - 備忘録
    smicho
    smicho 2005/12/02
    >>失業の不効用は、所得の低下という結果よりも、失業プロセスそのものによってもたらされる要素が大きい。
  • 雇用形式などに関する備忘録的整理(その1) - 備忘録

    9月以降のエントリーにおいて、いくつか日的な長期的・安定的な雇用システムの優位性について言及しながら、うまく整理できていないような違和感があり、現段階で、少し整理できた感が見えてきたので、備忘録的に整理しておく。 (方法論的)個人主義という考え方は、合理的な個人というものを前提とすることが重要なのだろう。合理的な個人というのは、自分なりに考えると、ある程度自分自身に見切りをつけた人間ということになる。期待の持てない将来の便益に期待し行動する人間は、明らかに合理的ではない。将来生じうる便益を見極め、それに合わせた消費行動や家族構成を考えることができる人間だけが合理的な個人と呼びうる。*1 そのように考えると、日的な長期的・安定的雇用システムは、同一世代内の格差が生じるのを先延ばしし、若い世代の割引率を高め(あるいは若い世代の合理性を疎外し)、その間の勤労意欲を引き出す事もそのねらいの一つ

    雇用形式などに関する備忘録的整理(その1) - 備忘録
  • ラスカルの備忘録 - 大竹文雄「日本の不平等 格差社会の幻想と未来」(その1)

    の不平等 作者: 大竹文雄出版社/メーカー: 日経済新聞社発売日: 2005/05/24メディア: 単行購入: 2人 クリック: 50回この商品を含むブログ (49件) を見る第1章 所得格差は拡大したのか 世帯所得の不平等度を考える場合、世帯人員数の影響を受ける。その調整方法として一般的に用いられるのが等価所得(=世帯所得/√(世帯人員))の概念。 橘木俊詔氏は、所得再分配調査の「当初所得」の数値により、日の不平等度(ジニ係数)は米国よりも大きいと論じたが、比較する統計の定義が異なっている。「当初所得」では、公的年金だけで生活する世帯が増えたことにより、ジニ係数は(他の調査と比較しても、)著しく高まる。 80年代は、低所得男性の配偶者ほど有業率が高いというダグラス・有沢法則が明確に成り立っているが、90年代に入るとその関係は弱くなり、97年においては夫の所得との有業率の間には

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  • 原田泰「世相でたどる日本経済」 - 備忘録

    世相でたどる日経済 (日経ビジネス人文庫) 作者: 原田泰出版社/メーカー: 日経済新聞社発売日: 2005/06メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (10件) を見る 日が経済的に発展してきたのは、日社会のなかでプロフィット・シーキング活動の比重が高く、レント・シーキング活動の比重が低かったから。日主義論争における講座派の見解は、日主義の発展は封建的要素を強く残したものであり、自由主義の経済政策による発展は望み得ないというもの。一方、労農派によれば、明治維新によって日は資主義への道をそれなりに歩み出した。 24時間操業による資コストの引き下げなど、新しい技術を当時の日の経済状況に適応させるという努力の規範を示したのは(、政府の関与ではなく)民間の企業家。「女工哀史」と言われるが、もし工女が工場に行かなかったら何をして暮らしていたかを考えれば

    原田泰「世相でたどる日本経済」 - 備忘録