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ブックマーク / traindusoir.hatenablog.jp (75)

  • ジェイン・ジェイコブス(香西泰訳)『市場の倫理 統治の倫理』 - 備忘録

    市場の倫理 統治の倫理 (ちくま学芸文庫) 作者:ジェイン ジェイコブズ発売日: 2016/02/09メディア: 文庫 率直にいって面白い。これまで自分の周囲で話題に上ることがなく、いまに至るまで読まずにきたことが不思議に思える位に面白かった。 原題は”SYSTEM OF SURVIVAL A Dialogue on the Moral Foundations of Commerce and Politics”。”Politics”という用語の使い方だが、これに関連する職業として文に「軍隊と警察、貴族、地主、政府各省と官僚、独占企業」が掲げられているので、「政治」ではなく「統治」と訳したのは適切だろう。”Morals”については直訳的には「道徳」であるが、訳者あとがきによれば「英語のmoralとethic、日語の道徳と倫理を区別せず、交互に自由に用いた」とのことである。初出は1992年

    ジェイン・ジェイコブス(香西泰訳)『市場の倫理 統治の倫理』 - 備忘録
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    smicho 2020/09/03
  • アベノミクス以降の労働力率 - 備忘録

    当ブログで継続して推計している「真の失業率」は、政権が交代した2012年末頃から低下し始め、足許では完全失業率(季節調整値)を下回っている。このことは、就業意欲喪失効果を可能な限り除去し雇用情勢の実態に即した指標であることを意図する「真の失業率」の解釈上、現下の雇用情勢は、推計上の基準年である1992年を超える好環境だということになる。しかしながら、物価や賃金の動きをみる限り、現時点の雇用情勢が1992年を超える好環境だとは解釈し難いものがある。また「真の失業率」は、このところ毎年の改訂で比較的大きく上方改訂され、改訂後でみると、完全失業率を上回る結果となる。 「真の失業率」の推計過程では、年齢階級別の労働力率(15歳以上人口に対する労働力人口の比)から、潜在的労働力人口*1を推計する。潜在的労働力人口は年単位で推計しており、毎年1月に再推計するため、過去分の数値に改訂が生じる。ここ数年の

    アベノミクス以降の労働力率 - 備忘録
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    smicho 2018/02/03
    >増加寄与のうち60歳台以上の層が占める割合(寄与率)はかなり大きい
  • 格差が縮小する勤労者家計 - 備忘録

    原油価格の下落等を背景に、このところ物価上昇率が縮小している。4月には消費税増税の効果も剥落し、物価は、夏に向けてマイナス転化するのではないかとの見通しもある*1。賃上げについても、経済理論的には、今年は昨年の消費増税分に目標インフレ率を加えた3〜4%程度のベースアップが必要となるところだが、実際のところほぼ不可能に近い。定昇を含めた春闘賃上げ率のベースで2〜3%というのがせいぜいであろう*2。だとすれば、ベースアップ分は1%未満であり、来年の所定内給与(パートを除く一般労働者ベース)も1%未満の上昇幅で推移すると思われる。パート比率が上昇しているため、全体の伸び幅はさらに小さくなる。 これは見方を換えれば、労使交渉における期待インフレ率は、事実上マイナスだということを意味している(消費増税分を1〜2%と見込んだ場合)。日銀の物価目標である「2%」という数値は、労使交渉における期待インフレ

    格差が縮小する勤労者家計 - 備忘録
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    smicho 2015/04/25
  • 真の失業率──2014年6月までのデータによる更新 - 備忘録

    完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで、完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果 (就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。 6月の完全失業率(季節調整値)は3.7%と前月よりも0.2ポイント上昇したが、真の失業率は4.2%と0.1ポイント低下した。真の失業率は概ね0.1ポイントずつ、順調に低下しており、完全失業率との乖離幅は0.5ポイントまで縮小した。真の失業率は、今月は完全失業率と逆方向の動きとなったが、これは非労働力人口の減少幅が拡大したためである。完全失業者をみても、自発的離職失業者や新たに求職した者を中心に増加しており、雇用情勢は総じて堅調である。 また、先月と同様、雇用は改善し、物価が上昇する中、『家計調査』による勤労

    真の失業率──2014年6月までのデータによる更新 - 備忘録
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    smicho 2014/07/30
  • 物価と給与の推移−2013年12月までのデータによる更新 - 備忘録

    消費者物価(生鮮品を除く総合、コア)と所定内給与(規模30人以上、概ね基給に相当)の水準比較の推移を更新した。所定内給与は、月半ばに公表される確定値では、パートタイム労働者構成比が上昇することで下方修正されることが多く、現在公表されている速報値は上方バイアスを持つと考えられるため、先月の確定値におけるパートタイム労働者構成比変化の寄与度をもとに推計した予測確定値を用いる。 先月掲載したグラフから、所定内給与は11月の確定値に更新し、あわせて12月分の数値を追加しているが、前回時点よりも給与が停滞したため、グラフには、基準線よりも物価が上昇する方向へ動く傾向がみられる。これは、貨幣の購買力を基準とする実質的な給与が減少したことを意味するが、一方では、先日のエントリーでみたように、雇用は堅調に増加している。 実質的な給与の減少は、企業においては、マンパワー当たりの実質的な人件費コストの減少

    物価と給与の推移−2013年12月までのデータによる更新 - 備忘録
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    smicho 2014/02/08
  • 真の失業率──2013年11月までのデータによる更新 - 備忘録

    完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで、完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過 小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。 完全失業率(季節調整値)は4.0%と前月と同水準であるが、真の失業率は前月に引き続き順調に低下し、4.6%(前月差0.2ポイントの低下)となった。この結果、完全失業率 (公表値)と真の失業率との乖離幅は0.6ポイントまで縮小した。 雇用の「質」の問題は残るものの、引き続き、雇用の「量」の改善は進んでいる。雇用・名目賃金はともに改善しているが、エネルギー等の要因に加え内需要因も加わった物価上昇の勢いには追いつかず、実質賃金は低下が続いている。 名目賃金の動向は来年の春闘の結果によって左右されるが、これが期待通

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    smicho 2013/12/28
  • 非正規雇用比率の上昇は、労働者構成の変化によるものか? - 備忘録

    先日のエントリーでは、物価の上昇に見合う賃金の上昇をマクロで実現することは、非正規雇用比率上昇による雇用面からの下押し圧力が続く限り困難であり、また、今後の雇用情勢の改善をみる上で、雇用の「量」の改善よりもむしろ雇用の「質」の改善をみることが重要であることを指摘した。 一方、非正規雇用比率に関して、性・年齢別の雇用者構成が変化する中、自然に上昇し得るものだとの見方もある。例えば、1月9日付け『かんべえの不規則発言』では、「男性は昔から就業率が高く、年代による就業率差もないので、就業者数は人口動態に従って減少局面にあ」り、「女性は、高齢者層は就業率が低い時代のままであり、この層が退出し、就業率が高い若年に移動すると、就業者数は増加する」傾向がある中、女性を中心に雇用者がこのところ増加し過去最高の水準となっているが*1、この場合、「介護や福祉など年収が高くない職種ばかりで女性の雇用が増えて、全

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    smicho 2013/12/14
  • 大学に価値はあるか? - 備忘録

    前回のエントリーで取り上げた濱口桂一郎『若者と労働』では、就活において「人間力」が重視されること、あるいは仕事の経験がない若者が「自己分析」など心理学的ツールを頼ることについて、日における「教育と職業の密接な無関係」という文脈から説明を講じている。「社員」としてのメンバーシップに入ることを目的とする日の就活、特に文系大学生の就活では、学校教育における教育の中身はほとんど考慮されない。大学のレヴェルは、学生の能力を証明する基準として、すなわちシグナルとしての意味合いを持つが、教育の中身は、就職に役立つものとはなっていない。この文脈から考えると、大学教育とは、壮大な無駄だということになる。 このような見方には、確かに「一理ある」と感じるところもある。ではなぜ日においては、このような壮大な無駄がなんの社会的批判もなくこれまで生き残ることができたのか。このことについて著者は、「日的雇用慣行

    大学に価値はあるか? - 備忘録
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    smicho 2013/09/22
  • 小野善康『成熟社会の経済学 長期不況をどう克服するか』 - 備忘録

    成熟社会の経済学――長期不況をどう克服するか (岩波新書) 作者: 小野善康出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/01/21メディア: 新書購入: 15人 クリック: 311回この商品を含むブログ (30件) を見る 現代の経済学において不況とは、長期的な成長経路から、一時的ショックを契機に生じる循環的なものを意味する。しかし日では、1990年を境として、デフレと不況がおおむね長期にわたって続いている。日経済に生じたこの長期不況は、現代の経済学において、どのように解釈されるのか。特に、長期不況を引き起こした経済の環境とはどのようなものであり、また、長期不況を引き起こす〈機動力〉は何だったのか。この問いに対する著者の回答は、1980年代から1990年代を境として日経済が「成熟社会」に変化したこと、そしてバブル崩壊により人々に蔓延した貨幣保有選好の高まり、ということになるだろう

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    smicho 2012/04/01
  • アマルティア・セン(大門毅[監訳]、東郷えりか訳)『アイデンティティと暴力 運命は幻想である』 - 備忘録

    アイデンティティと暴力: 運命は幻想である 作者: アマルティア・セン,大門 毅,東郷えりか出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2011/07/09メディア: 単行購入: 8人 クリック: 267回この商品を含むブログ (26件) を見る 書でセンが主張するのは、人間の理性による選択の優位性であり、人間は選択の余地なく唯一のアイデンティティを有しているという「幻想」への批判である。そして、後者に該当する考え方として批判の俎上に載せられるのが、コミュタリアニズムやサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」、文化多元主義などである。例えば、コミュタリアニズムでは、コミュニティにもとづく支配的アイデンティティは「発見」されるものであり、当人には、アイデンティティを選択する権利は備わっていないことになる。これに対して、センは、理性による選択が果たす役割を重視し、一方で、「アジア人であるのと同時

    アマルティア・セン(大門毅[監訳]、東郷えりか訳)『アイデンティティと暴力 運命は幻想である』 - 備忘録
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    smicho 2011/12/14
  • 雇用政策のジレンマ - 備忘録

    ※追記および関連エントリーを追加しました。(12/03/11) ここにいう「ジレンマ」とは、通常、雇用情勢がよくなること、例えば、求人数が増加すれば、雇用政策の執行はより容易になると考えるのが自然であるが、逆に、雇用情勢がよくなることによって、雇用政策の執行がより困難になる側面もある、ということを意図している。ブログは、とりわけ経済や雇用の問題に関心のある方に読んでいただく傾向があるので、これまで、ちまたの議論ではあまり指摘されることのなかったこの問題について取り上げる。 2008年秋の金融危機に端を発する需要の大幅な縮小により、雇用情勢は急速に悪化したが、麻生自民党政権(当時)は、これまでにない規模の雇用対策を発動した。これらを簡単にカテゴライズして整理すると、つぎのようになる。 雇用調整助成金などを活用した企業の雇用維持の支援 基金を活用した自治体による一時的な雇用機会の創出 雇用保

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    smicho 2011/12/02
  • 濱口桂一郎『日本の雇用と労働法』 - 備忘録

    の雇用と労働法 (日経文庫) 作者: 濱口桂一郎出版社/メーカー: 日経済新聞出版社発売日: 2011/09/16メディア: 新書購入: 10人 クリック: 124回この商品を含むブログ (9件) を見る 日の雇用システムを構成している各種の部分システムは、メンバーシップ型雇用契約という概念を中心におくことで、相互補完性をもちつつ、システム全体に一貫性をもたせるものとなる。一方、雇用システムを制度として考えたとき、その基原則を定める法制度、すなわち日の労働法は、ときには現実の雇用システムと対立し、またときには現実の雇用システムと妥協を図りながら、これまで変遷してきた――書は、戦前から戦中、戦後と続く日の雇用システムと労働法の世界で、これらの間に生じてきた緊張関係を、上述のような視点によって描き出す。来、新書として著すには広大な領域をもつ日の雇用システムの全体像を、書は

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    smicho 2011/10/12
  • ジョージ・アカロフ、レイチェル・クラントン(山形浩生、守岡桜訳)『アイデンティティ経済学』 - 備忘録

    アイデンティティ経済学 作者: ジョージ・A・アカロフ、レイチェル・E・クラントン,山形浩生、守岡桜出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2011/07/21メディア: 単行購入: 4人 クリック: 128回この商品を含むブログ (18件) を見る 経済学では、人間の行動の動機を効用関数の最大化として記述し、効用とは、主に消費や収入、余暇時間等によってきまるものとされている。また、効用関数は、個々の人間の嗜好や選好によって異なるものとされる。ここで、嗜好や選好はあくまで個々の人間に属する特性であり、まわりの環境には依存しない。だが、現実には、人間の行動は、自分が所属する社会の規範にも左右される。このことは、経済学のオーソドックスな記述の仕方を、より現実に近い記述の仕方に見直すことができる可能性を示唆するものである。 書が取り扱うのは、そのひとつのアプローチである。人間には、個人の

    ジョージ・アカロフ、レイチェル・クラントン(山形浩生、守岡桜訳)『アイデンティティ経済学』 - 備忘録
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    smicho 2011/08/30
  • 米国の「日本化」? - 備忘録

    最近公表された米国のSNA統計をみると、米国経済は、このところ踊り場的局面を迎えつつあり、雇用については、しばらくは厳しい情勢が続くことが見込まれている。実質GDPの対前期比は0.3%の増加であるが、消費の伸びはゼロとなっている。 一部では、米国国債の格付けの低下を受け、米国の「日化」とよび、米国経済が日のように「失われた10年」に突入することを懸念する向きがあることが指摘されている。 http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2628 しかしながら、この指摘については、理解することは困難である。確かに、米国経済の今後の行方は予断を許さないものであり、雇用情勢の厳しさについてはいうまでもない。ところが、GDPデフレーターをみると、輸入物価の上昇がマイナス寄与を与えているものの、国内需要のデフレ傾向については、おおむね払拭されている。

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    smicho 2011/08/17
  • 『ニュー・エコノミクス──GDPや貨幣に代わる持続可能な国民福祉を指標にする新しい経済学──』デイヴィッド・ボイル、アンドリュー・シムズ(田沢恭子訳) - 2011-08-14 - ラスカル��

    ※注記を追加しました。(08/21/11) ニュー・エコノミクス―GDPや貨幣に代わる持続可能な国民福祉を指標にする新しい経済学 作者: デイヴィッドボイル,アンドリューシムズ,David Boyle,Andrew Simms,田沢恭子出版社/メーカー: 一灯舎発売日: 2010/06メディア: 単行購入: 2人 クリック: 79回この商品を含むブログ (1件) を見る 社会の効率を高めるためには、自由な経済主体である民間企業が活躍する場をより広げる一方で、規制や補助金等によって保護される業界は、できる限り、自由な参入を認めるようにする必要がある、ということについて、恐らく、原則論としては誰も反対しないであろう。しかしながら、自由な経済主体であると考えている自分自身(や、自分自身が属する業界)が、当に社会的に保護されていない存在なのか、という点については、やや感度が乏しいように感じられ

    『ニュー・エコノミクス──GDPや貨幣に代わる持続可能な国民福祉を指標にする新しい経済学──』デイヴィッド・ボイル、アンドリュー・シムズ(田沢恭子訳) - 2011-08-14 - ラスカル��
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    smicho 2011/08/14
  • 自殺率を説明する各種指標に関するメモ - 備忘録

    1.今回の分析では、1人あたり雇用者報酬と有効求人倍率を、それぞれ所得、雇用に関する指標として別々にあつかった。一方、既存研究では、完全失業率など雇用に関する変数に一元化して回帰するケースが多い。この点については、つぎのような二つの事例から、その意味を考えることができる。 需要が収縮すると、企業には、休業によって生産量を削減する一方、雇用者には休業手当を支払って雇用を維持する傾向がみられる。この場合、雇用は悪化しないが、労働の限界生産性は低下するため、賃金は低くなる。 雇用情勢が悪化すると、ハローワークが中心となって求人の確保に努める。この場合、生産の拡張や欠員にともなう求人の場合よりも、提示される賃金は低くなる。 これらの場合、所得と雇用にはトレード・オフの関係が生じる。また、こうして確保された雇用は、需要の増加で生まれる雇用とは性格の異なるものであるといえ、行政のパフォーマンスという面

    自殺率を説明する各種指標に関するメモ - 備忘録
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    smicho 2011/07/27
  • 所得と自殺率の相関性(補足・その3) - 備忘録

    これまでのエントリーの締め括りとして、自殺率を被説明変数とするパネルデータを分析する。今回用いる自殺率は、自殺予防総合対策センター『自殺対策のための自殺死亡の地域統計1973-2009』に掲載されている男性の年齢調整自殺率(1996〜2008年)とし、説明変数は、1人あたり雇用者報酬と有効求人倍率とした。なお、年間日照時間のデータは入手できなかったため、今回の分析では含めていない。このため、都道府県ごとの日照時間の違いは、その他の異質性とともに「固定効果」に含まれることとして解釈される。 なお、パネルデータの分析では、モデルの選択に細心の注意が必要であり、誤ったモデルを用いれば、結論は事実と異なるものとなる。*1今回は、一般的なつぎの3種類のモデルによって推計を行い、統計検定によって評価を行う。 ・プールドモデル すべてのデータを一括して(時系列、クロスセクションの区別なく)扱い、通常の最

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    smicho 2011/07/24
  • 所得と自殺率の相関性(補足・その2) - ラスカルの備忘録

    前回までのエントリーにおいて残された、自殺率を説明する所得水準、高齢化以外の要因を探るため、今回は、説明変数に有効求人倍率、年間日照時間、ソーシャル・キャピタルの水準(SC指数)を加えたモデルで回帰分析を試みる。被説明変数は、前回同様、クロスセクション型年齢調整自殺率とし、年間日照時間は気象庁「気象庁年報」による気象官署所在地別の年間日照時間(2005年)、SC指数は日総研『日のソーシャル・キャピタルと政策』において試算された地域別SC総合指数(2007年)を天下り的に利用した。モデル1では、説明変数を1人あたり雇用者報酬、有効求人倍率のみとし、モデル2ではこれに年間日照時間を、モデル3ではさらにSC指数を加えて推計している。 結果をみると、まず、有効求人倍率は1人あたり雇用者報酬とともに自殺率と有意に関係している。1人あたり雇用者報酬は雇用者に関係する指標である一方、有効求人倍率は労

    所得と自殺率の相関性(補足・その2) - ラスカルの備忘録
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    smicho 2011/07/23
  • 所得と自殺率の相関性(補足) - ラスカルの備忘録

    前回のエントリーでは、都道府県別のクロスセクション・データによって、所得水準と自殺率の間に相関性があることを確認した。ただし、この分析では、高齢化率が所得水準と自殺率の双方に関係をもっているため、見かけ上、所得水準と自殺率の間に相関性が生じている可能性を排除することができない。すなわち、高齢化が進んでいる都道府県ほど就業率が低下しており、消費の停滞と物価・所得の下落が大きくなるとともに、健康不安がより高まることで自殺率も上昇する、といった説明の仕方も可能である。今回は、都道府県別に異なる高齢化の水準を調整した自殺率を推計し、これと所得水準との相関関係を確認することで、上述のような指摘の可能性に一定の回答を与えることを試みる。 まず、都道府県別自殺率を20〜29歳、30〜39歳、40〜49歳、50〜59歳、60〜69歳の各年齢層別に計算する。使用したデータは、内閣府『平成21年地域における自

    所得と自殺率の相関性(補足) - ラスカルの備忘録
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    smicho 2011/07/20
  • 東北6県の所得の低下と自殺率 - 備忘録

    デフレは、物価と所得が相互に関係することで、名目所得の低下と強く関係するが、名目所得の低下は、必ずしも全国で一律的に生じているわけではなく、地域ごとに、その度合いには違いがある。試みに、東北6県と全国の名目所得(マクロの雇用者報酬)の推移をみると、つぎのようになる。なお、これは県民経済計算の雇用者報酬をみたものであり、現在のところ、2008年まで推計されている。このため、グラフでは、経済危機直後までの動きを表している。 全国では、景気の回復にともない、2005年を境として所得は上昇に転じ、おおくの県は、これと同様に推移している。しかし、秋田および岩手の2県では、景気拡張期にあっても名目所得は低下しており、経済危機によって、その低下は一段と大きなものとなっている。 ただし、マクロの名目所得は、雇用者1人あたりの所得に加え、雇用者数の影響も受ける。実際、秋田では、この間、雇用者数が大きく減少し

    東北6県の所得の低下と自殺率 - 備忘録
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    smicho 2011/07/17