チュニジア、エジプトと来たあと、バーレーン、リビア、ヨルダン、イラク、イランなど、中東のイスラム教国で政治的動揺が収まらない。なぜこう連鎖するのか。そこには1つの大きな共通の要因がありはしないのか。今回はそれを取り上げる。そして、今の動乱の後にはどんなてん末が待っているのか。 これら中東のイスラム各国が共通に抱えている問題は数多くある。政治的参加が大きく制限される独裁・長期政権の存在、石油や天然ガスなどに依存せざるを得ず、ほかには観光くらいしかない産業の幅の狭さ。これに起因する、人口増著しい若者の失業の増大、権力者の周辺の一部の人間のみが豊かになって富を蓄積していること、警察など権力が横暴に振る舞うこと、それなのに、国民の大部分が貧しいという現実――などだ。こうした現象を、われわれ先進国の人間はイスラムの特殊性、イスラムの後進性としばしば見なす。私はこれらを「イスラム的停滞」と呼んでいる。