「人間」が「物」と同じように扱われるようになった。この人間がモノ化した現象を、著者は「モノ・サピエンス化」と呼ぶ。この「モノ・サピエンス化」は、いったいいつから始まったのだろうか。また、「モノ・サピエンス化」はわれわれに何をもたらそうとしているのか。本書は、「モノ・サピエンス化」が本格化する80年代、さらにその傾向に拍車がかかったとする90年代に焦点をしぼって、人間のモノ化をさまざまな現象から検証していく。 モノ化とは、物質化であると同時に「mono=単一」化でもあるという。「資本主義社会の下、どんな商品も〈お金〉によって価値が一元化するように、〈物化〉するということは〈単一化〉することでもある」。まさに現代は、人間が物質化し単一化した「モノ・サピエンス」の時代であり、それはまた、資本主義社会が生み出した歴史的必然ではないかというのが著者の下した結論だ。 本書は、プロローグで、まず二つ