全行程1440kmにおよぶ四国八十八ヶ所遍路。この長い遍路道を延々と歩き、野宿をしながら暮らす「草遍路」と呼ばれる人たちがいる。ときに放浪者として迫害されることもある草遍路。彼らがそうした生き方を選択した理由とは。 ノンフィクション作家の上原善広氏は、実際に現地で草遍路たちの話を聞いた。ここでは同氏がそのもようをまとめた著書『四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼』(KADOKAWA)の一部を抜粋。2人の草遍路の胸の内に迫る。(全2回の1回目/後編を読む) ◆◆◆ 草遍路のナベさん 私が実際に話を聞いた草遍路は2人いて、いずれも幸月(編集部注:四国遍路を回ることをなりわいとしていた老人。やがて遍路関係者の間で有名になり、NHKのテレビ番組で全国放送されたところ、指名手配犯だとわかって逮捕された)の支援者だった鵜川(編集部注:遍路道沿いに住み、草遍路の人々を接待していた男性)の紹介なのだが、そのうち