コピーライターが若い人の憧れだった頃、コピーライターの言葉はスナフキンの言葉だった。少なくとも多くの若いコピーライターは、スナフキンの言葉を書きたがった。つまり、スナフキンになりたがった。企業の言いたいことの代弁でもなく、かといって消費者の生の言葉でもない、そのふたつの境界上で語られる言葉。その言葉を書けるのは、コピーライターしかいない。そんなふうに思っていた。その自負があった。 スナフキンというのは、春になるとムーミン谷に戻ってくる吟遊詩人。自由と孤独、音楽を愛し、ややこしい人間関係からも、厳しい現実からも一歩身をひいて、真実らしい言葉を言葉少なに語って、その言葉だけを残して、冬が来る前にまた旅に出かけていく。 「そのうちなんてあてにならないな。 今がその時さ。」 「大切なのは、自分のしたいことを、自分で知っている事だよ。」 「おまえさん、あんまりおまえさんがだれかを崇拝したら、ほんとの
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