ブックマーク / note.com/segawashin (3)

  • 【小説】五月、隣人と|瀬川深 segawashin

    11年前、2009年の春に書き、私家版で少部数配布した小品ですが、昨今の事情に鑑みて公開します。執筆の経緯などは最後に記してあります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 五月、隣人と 五月にはあるまじき寒さのためなのだという噂を聞いた。うんざりするほど人が多いからなのだと言う噂を聞いた。いつまで経っても衛生観念が浸透していかないからなのだという噂を聞いた。乾燥のためなのだという噂を聞いた。自宅近くで乗り込んだタクシーの運転手は得々と語ったものだ、つまるところ山火事と一緒なんだろう? 乾燥が過ぎれば山が燃えて、消えやしないからな。 どれが当かなど、男には判断できない。バネやネジやベアリングの品質を試し、それが自動車のどこに収められてゆくのかはなにも見ずに答えられても、そのバネやネジよりも小さいウイルスとなれば男の手には余る。でっぷり肥った運転手はバックミ

    【小説】五月、隣人と|瀬川深 segawashin
  • 【小説】戦争のしらせ(前編)|瀬川深 segawashin

    翌朝の新聞は予定通りに南(なん)溟(めい)での開戦を告げていた。大統領は途中までを流し読み、顔をしかめた。引用されていた勅令が二度にわたって誤植されていたからである。大統領は即座に秘書官を呼んでこのようなことがないようにと厳命し、なんとなればこれは人の生死に関わることなのだからな、と付け加えた。ただちに対処いたします、秘書官はかしこまったのちに告げた。閣下、日はお忙しくなるかと存じます。なにしろこのような偉大な一歩の記された日ですから。はたしてそのようになった。まずは電話がひっきりなしで、秘書官が厳しく判じ分けても大統領に回ってきた電話は十五に及んだ。政権与党の幹事長、有力議員、財界の有力者が、いずれも興奮ぎみに大統領の英断を褒め讃えた。閣下、おめでとうございます。これをもちましてわが国は新しい歴史の一ページを開きましたな。わがことのように誇らしく思いますよ。祖国と閣下にとこしえの栄光

    【小説】戦争のしらせ(前編)|瀬川深 segawashin
  • 愛知トリエンナーレと「表現の不自由展」に行ってきた|瀬川深 segawashin

    愛知トリエンナーレ内の展示企画「表現の不自由展」に行ってきた。 当初この企画のことを知ったとき、「これは大変なバッシングに晒されるだろうな」と思ったものだが、事実その通りになった。「早晩中止になるかも知れないから見に行くなら今だ」と思い定め、無理矢理予定を半日空けて名古屋まで出向いたが、その夜、脅迫に晒されてこの展示の中止が決まったことを知って予感は的中した。 なんというか、膝から崩れるような落胆を感じはしたが、驚きはなかったし、奇妙なことに憤る感情もなかった。それは、この炎天下に何日も放置していた鍋を空けてみたら予想通りにドロドロに腐りきっていてもはや手の付けようもなかったのと同じようなもので、予想通りと言うよりは予定通り、この日社会がもう取り返しが付かないぐらいにダメになってしまっていることを知らされたというよりも再確認させられただけのことだからなのだろう。 ともあれ、落胆を通り過ぎ

    愛知トリエンナーレと「表現の不自由展」に行ってきた|瀬川深 segawashin
    snobbishinsomniac
    snobbishinsomniac 2019/08/08
    これを読んで津田の力量不足だと言うのがわからない。これだけの作品を集めたのは津田で、中止に追い込んだのは見もせずに脅迫した方だろう。何れにしても展示が中止になったことが異常事態である。
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