死は誰にでも平等にやってくるが、一度しか経験できない。そのため、多くの人が納得のいく形で亡くなることができていない。「下手な死」を避け、「上手な最期」を迎えるためには何が必要なのか。 チューブだらけの最期 死ぬ時は眠るように、穏やかに逝きたい—。苦しみながら死んでいくのはごめんだと、誰しも考えているはずだ。 だが、2020年に公開された人口動態統計を見ると、日本人の71・3%が病院で息を引き取っていることがわかる。これは多くの人が死の間際まで延命治療を受けながら、苦痛とともに亡くなっていくことを意味している。医師で小説家の久坂部羊氏が自らの経験を語る。 「40年ほど前、駆け出しの外科医だった私は総胆管結石を患った70代の女性の手術を担当しました。しかし、彼女は手術後に原因不明のけいれんを起こし、肺炎も併発してしまったのです」 この人を死なせるわけにはいかない。久坂部氏は患者に人工呼吸器をつ