ネットをやっていると、なんかつらいな、とか、めんどくさいな、と思うことがあります。 それがどんなに歪んだものであっても、悪意をぶつけられるのは、やっぱり気持ちが良いものではないのです。 『毎月新聞』(佐藤雅彦著/中央公論新社)という本のなかに、こんな文章があります。 15年くらい前に書かれたものです。 僕は、ネットが嫌になったとき、これを読み返すようにしているのです。 故郷で独り住まいをしている高齢の母親は、テレビの野球中継をとても楽しみにしています。「この松井って子はいいよねえ」と、目を細めながら応援しています。そして、好きな番組が終わると迷いもなくテレビを消すのです。たまたま帰郷していた僕は、そんな母親のあたり前の態度にハッとしてしまいました。『面白い番組を見る』――こんなあたり前のことが僕にはできなかったのです。 テレビを消した後、静けさが戻ったお茶の間で母親は家庭菜園の里芋の出来に