古代ローマ人の24時間―よみがえる帝都ローマの民衆生活 [著]アルベルト・アンジェラ[掲載]2010年10月10日[評者]柄谷行人(評論家)■一日を再現、積年の疑問解けた 本書は、古代ローマ最盛期の社会を、一人の人物(語り手)の一日の経験として描くものだ。もちろん、フィクションであるが、細部に関しては最新の史料にもとづいている。私は古代ローマの政治や経済について多少勉強したが、具体的な姿はわからなかった。せいぜい小説や映画から得たイメージしかない。また、それに関して疑問に思っていたことがたくさんある。たとえば、なぜ彼らはいつも公衆浴場にいるのか、誰が奴隷かどうしてわかるのか、というような。 ローマは最盛期に人口150万人といわれるが、狭い土地にどうしてそんなに人が住めたのか? 高層の集合住宅が林立したのである。そのために投機的で悪質な開発業者が横行した。家賃が払えないと野宿者になる。その意