いつかロバートの秋山が成人した日にキャバクラに連れられた話を思い出す。 池袋の夜は華やかはあれど、昭和の香りが煙たく漂う古臭い場所だった。 まるで、余市のような。ピートの強さが強調された力強い雰囲気がある。父が過ごした30年前と大して変わらない空気。 バーボンが持つ甘さは、そこに一切存在しない。スコッチの煙たい臭い。それが好きな人間しか受け入れられない古臭い匂い。池袋西口に連れられた私はそんな妄言を考えていた。 新宿の歌舞伎町が、かつて持っていた日本一のネオンが薄れゆく中で、往時の輝きをあいも変わらず放つのは池袋西口なのだろうか。 父とその友人は行きつけの居酒屋に向かう最中に変わらないとの言葉を仕切りに話していた。 この街は変わらないと。 目印的存在であった池袋西口マルイ百貨店が潰れてしまっても、彼らは池袋が変わらないと口にする。 東京芸術劇場を抜けて、すぐの池袋西口公園の外側は永遠と広が