『帝国以後―アメリカ・システムの崩壊』 エマニュエル・トッド著(藤原書店 ¥2500税別)/書評 この不透明な現実の中、あまりにも多くの人々が悲嘆のうめき声をあげているから、何度も本書を読み返していた筆者はもう待ってもらえないのだと覚悟を決めた。力不足をかえりみず、いま書評を書こうとするのは、愛する彼らから聞こえる悲鳴のためである。 数多く出版されてきた現代世界の政治批評に混じって、二〇〇二年九月初旬にフランスで発行された人類学者エマニュエル・トッド氏のこの著作は、噂どうりの、まれに見る名著である。書評を書きだした者を、どこまでその魅力が伝えられるかまるで自信が持てないと逡巡させてしてしまうほど、本書の広くて深い分析と批評には目が眩むような威力があるのだ。しかし世界の現実は、そんな躊躇などあざ笑いつつ進展していく。そして進行方向は、これこそが歴史のDNAに刻み込まれた遺伝情報なのだと証言す