今は昔 新婚時代、古アパートには猿夫の弟がよく訪れました 村から町に遊びに来て、映画や娯楽施設を巡り 独身を謳歌していました 楽しんだ後は旅館代わりにコチラに一泊します 当時、私は一日千円で二人分の食費を賄っていた頃です 彼は小柄にも関わらず 若い男性よろしく 私の手料理を大量に食します 風呂や寝具ごしらえ、あくる朝の食事 仕事もしていた私には、泊り客は 負担も重く いつも苦々しく思っていたものです ある日、いつものようにやって来た彼に 私はおでんを鍋いっぱい こしらえて、 二切れくらいは ゴボ天とか厚揚げとか 残るだろう そう思って全量を彼に振る舞いました なんと! 彼は 鍋いっぱいのおでんを、へらへらと猿夫と談笑しながら 一人で全部平らげてしまったのです 残り物を翌朝の猿夫と私、二つの弁当に入れるつもりでした ひどくガッカリしたのを覚えています そんな毎日を送る一方で 盆・正月・彼岸に