公式にその存在が確認されてから60年経ってなお、政府が行った症状の「定義」の狭さゆえに、未だに未認定、未申請の水俣病患者がいることをご存知だろうか。 7月9日、講演会「水俣病事件公式発覚から60年のいま、考える」(主催:最首塾)が都内で行われた。 講演者の一人、緒方俊一郎医師は、水俣病が診断できる数少ない医師の一人である。1941年生まれで、水俣市にほど近い相良村(さがらむら)の開業医だ。医学生のころ、水俣病の診断ができるようになりたいと、第一人者である原田正純医師のもとを尋ねると、「私よりも患者の話を聞きなさい」と言われ、日曜のたびごとに水俣へ行き、勉強した。 卒業後、水俣病の診療所を水俣市に作ることも考えたが、「ふるさとに医師がいないと困る」と考えてやがて相良村へ戻った。 しかし、2010年5月以後、その相良村の緒方医師のもとを500人近くの患者が尋ねるようになった。その年、水俣病被害