「いつかあの世で我が子と再会した折には今迄(いままで)の子不幸を償い…」-。昨秋、八十八歳で亡くなった女性の部屋で見つかった手紙。息子より先に逝くことをわびる気持ち、息子が入所する施設に今後を託す気持ちが、便箋二枚にわたってつづられていた。 息子は五十八歳。重度の知的障害があり、四十年近く前から名古屋市緑区の施設「ゆたか希望の家」で暮らす。女性は早くに夫を亡くし、ずっと母一人、子一人。市営住宅で暮らしながら、息子に会うため、年を取ってからも二カ月に一度は施設に足を運んだ。 息子を案じる思いは、二〇一三年六月に作り、施設に預けた遺言状にも。死亡時に必要となる経費以外の財産を全て、施設に寄付する内容だ。女性が息子に財産を残しても、施設で暮らし、公的な障害福祉サービスを受けている限り、使い切れずに亡くなる可能性が高い。息子は障害があって遺言状を作れないため、死後に法定相続人がいなければ、残った財
知的障害者の親亡き後の支援を考えるセミナー「親から地域社会へのバトンタッチ」が十六日、富山市安住町のサンシップとやまであり、当事者や有識者が知的障害者をどう支えるかを考えた。富山市と同市手をつなぐ育成会が主催し、約三百人が参加した。 育成会によると、県内で療育手帳を持つ人のうち72%が在宅で親らの世話を受けて暮らしている。セミナーでは親世代の高齢化で老障介護が問題となる中、親亡き後も障害者が地域で安心して暮らせるよう、支援体制などを話し合った。 大分県自閉症協会会長の平野亘さんが、親亡き後問題の解決策について報告書をつくった同県別府市の委員会の議論を紹介。自閉症の次女を持つ平野さんは、自立とは「人の手を借りながら自分らしく生きること」と話し、知的障害者を「家の中に閉じ込めるのではなく、ケアの社会化を進めていかないと親亡き後の問題は解決しない」と強調した。
電動車椅子を利用中の飲酒禁止を呼び掛ける警察庁の対応について、障害者団体が「不当な差別だ」と抗議し、改善を要望している。道交法上、車椅子は歩行者扱いだが、普及に伴って事故も増えており、識者の間でも見解が割れる。 「飲酒等して電動車いすを利用することは絶対にやめましょう」。警察庁が二〇〇二年に作成し、ホームページで公開する「電動車いすの安全利用に関するマニュアル」にはこう記されている。道交法は、電動車椅子も含めて車椅子や歩行補助車等を歩行者と定義。高齢者が使う三輪や四輪の電動シニアカーも電動車椅子に含まれる。警察のマニュアルは、こうした車両と障害者用の電動車椅子を区別していない。 これに対し、障害者の権利を訴えるNPO法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議(本部・東京)は八月、警察庁にマニュアルの飲酒に関する部分を削除するよう要望書を提出した。車椅子は障害者にとって足と同様の存在であ
障害のある子どもたちが通う「あしたもえがお」。運営するNPO法人は報酬改定で減収となり、放課後デイ2カ所を統合した=名古屋市南区で 「二つが統合して通ってくる子が増えたことで、ストレスを感じている子は多い。友達の体を押したり、他の子の物を取ったり。いたずらして自分の存在を職員にアピールする子が増えた」。名古屋市南区の放課後等デイサービス(放課後デイ)「あしたもえがお」の管理者、仲松美咲さん(27)は声を落とす。放課後デイは、障害がある子どもたちが、活動しながら放課後や長期休暇などを過ごす施設だ。 通ってくるのは、特別支援学校などに通う小学二年から高校三年までの二十五人。しばらく前までは、中学生と高校生の計十一人だったが、運営主体のNPO法人「あした」が市内にもう一カ所開設していた放課後デイを七月に閉鎖。統合により、小学生ら十四人が移ってきた。 いずれの施設でも、子ども十人を職員七人で見る態
午後七時、津市の山あいにある知的障害者施設「三重県いなば園」では、入所する百五十人の一日が終わりに近づいていた。夕食を済ませた成人寮の入所者たちはソファに腰掛け、入浴時間を待っている。そんな中、一人の男性(20)が、寮長の野田寛将(ひろのぶ)さん(45)を見つけるなり、廊下の向こうから一目散に走り寄ってきた。 「ごめん。お父さんは今日、迎えに来ないんだ」。無言で目に涙をためた男性に野田さんが声を掛ける。この日は週一回の帰宅日だったが、急きょ父親の都合が悪くなった。発達障害で、気持ちの切り替えが苦手なのも相まって、男性はその後もしきりに野田さんに詰め寄ってきた。 「ずっと施設で暮らしてもいいと思っている人は多分、いないと思いますよ」。三十五年勤める園の地域支援部長、米倉恵里さん(56)の実感だ。気持ちを言葉に出すのが難しくても、会いに来た家族を見送る時は必ずといっていいほど寂しそうな表情をす
医療機関を除き知的、身体、精神などの障害者入所施設は二〇一六年度時点で全国に二千六百カ所あり、計約十三万人が暮らしている。施設以外で暮らす選択肢は広がっているものの、厚生労働省の担当者や施設関係者らによると、施設数や入所者数はかなり以前から大きく変わっていないという。 コロニーといわれる障害者の大規模入所施設の建設が相次いだのは一九六〇年代後半から七〇年代。厚生省(現厚労省)の有識者懇談会が六五年、欧米にならって整備を提案したのを受けてのことだった。 当時は、障害がある人が偏見や差別を露骨に受けることもしばしば。親たちにとって、自分たちの死後も子どもが安心して暮らせる場の確保は悲願だった。それを反映し、施設は病院、学校、作業所などを備え、全ての生活が敷地内でできるようになった。東京ドーム五十個分の敷地面積約二百三十二ヘクタール、定員五百五十人の「国立コロニーのぞみの園」(現国立のぞみの園)
医療的ケアが必要な子どもが増える中、滋賀医科大小児科の底田辰之助教が、地理情報システム(GIS)を活用した医療情報地図を開発中だ。子どもの医療データのほか、災害時の避難所や診療所の情報を載せ、介護する家族に情報提供する考えだ。全国的に珍しい取り組みで、早ければ二〇一八年度から大学病院内で試験的に運用を始める。 医療的ケアが必要な子どもたちは、難病や重い障害のために、日常的に人工呼吸器やたんの吸引、胃ろうによる栄養の注入などが必要で、医療技術の進歩で年々増えている。 開発しているのは、こうした子どもの自宅のほか、災害時に駆け込める非常用電源を備えた避難所や学校、近くの医療機関や福祉施設の場所が表示される電子地図。子どもの自宅をクリックすると、病名や呼吸器の有無、服用している薬やかかりつけ医の情報も見られるようにする。 県などによると、心身に重い障害のある医療的ケアが必要な子どもは、今年四月一
障害者が働きながら知識を身に付ける施設「就労継続支援A型事業所」を運営する株式会社「障がい者支援機構」(名古屋市北区)が経営難となり、障害者が大量解雇された問題で、機構が同区の事業所「パドマ」の廃止届を市に提出し、市が受理したことが分かった。13日付。 パドマは7月に閉鎖状態となり、翌8月、箱詰めなどの軽作業に従事していた55人が解雇された。2013年の設立以降、国や県、市から受けた給付金は総額2億8千万円余に上る。機構は県内や関東地方など全国6カ所でA型事業所を運営していたが、先月の愛知県清須市の事業所に続き、最大規模のパドマも廃止される。 市関係者によると、既に障害者30人以上が一般企業や他のA型事業所に移ったが、20人ほどは失業保険を受けながら今も求職活動中。機構側は解雇した障害者から今後の意向を聞き取るなどしており、市は「責任を取った」として廃止届を受理した。機構は市に「愛知県外の
障害のある人に対する医療の向上を図るため、県と岐阜大は、障害児専門の「県立希望が丘こども医療福祉センター」(岐阜市)で、研修医向けの新しいプログラムの実施に乗り出す。二十九日、新協定を結んだ。 同センターの小児科で、発達障害の可能性がある子どもが初めて診察を受けるのに数カ月待つ必要があるなど、障害児者の医療に携わる医師の育成や確保が急務の課題となっている。県は、協定によって課題解決に向けた取り組みを進めたい考えだ。
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く