(英エコノミスト誌 2012年2月25日号) 沿岸部に出稼ぎに行った30年間を経て、内陸部の人は今、徐々に郷里に近い場所で働くようになっている。 「働くため、家族の面倒を見るために故郷に帰ろう」。中国本土の真ん中にある福興という山腹の町の目抜き通りには、こんな赤い横断幕が掲げられている。 最近まで、福興周辺の村の農民はひたすら、カボチャ畑から逃れ、1000キロ以上離れた沿岸部の工場で高い給料をもらうことを夢見ていた。地元の役人は喜んで村民を送り出した。ところが今、役人は彼らを引きとめるのに必死になっている。 福興が位置する金堂県はかつて、四川省の県の中で最大の労働者輸出拠点という怪しげな称号を与えられていた。貧しく、内陸部の奥地にあり、海外市場との交通の便が悪い四川省は、仕事にあぶれた膨大な数の農村部の住民に、別の場所で仕事を見つけるよう促すしか選択肢がなかった。 金堂のような県の役人は、