今般上梓した『法服の王国~小説裁判官』の執筆のきっかけは、大手邦銀による脳梗塞患者への過剰融資事件に巻き込まれたことだった。証人尋問の最中に裁判官は居眠りをし、判決文は銀行側の主張を丸写ししただけで、偽造された署名捺印にもとづいて妻の連帯保証を認定し、総額24億円強の融資の大半が違法な両建預金(融資した金で作らせる預金)にされていたにもかかわらず、銀行全面勝訴という驚天動地の判決だった。しかもその裁判官が、司法試験の考査委員(試験官)も務める東大法学部卒のエリートだというのである。 裁判官はI種(上級職)の国家公務員よりも多い報酬をもらう高給公務員である。しかし、仕事ぶりはこの体たらく。「いったいどうなってんの!?」と叫びたい気分だった。 声はすれども姿は見えず この際、裁判官の生態を徹底的に解明してみようと意気込んで取材を始めたが、知り合いに裁判官は一人もいない。そもそも裁判所に勤務でも