ワールズエンドうさぎ(鬱病なのでこうよばれている)が「たいへん……遅刻しちゃったら公爵夫人に怒られる……いやだなあ……今日はやっぱり帰ろう……」とひとりごちて踵を返すと、そこには小さな人間の女の子が立っていた。 「ええと、ここはどこかしら。さっき穴に落っこちたのだから、ひょっとすると地球の裏側まで来ちゃったのかもしれないわね。でもそうすると、わたしは今さかさまに立っていることになるわ! お空に落ちたら大変! 気をつけなくっちゃ! あら、こんにちはうさぎさん。ごきげんいかが?」 少女はうやうやしくお辞儀をした。 ワールズエンドうさぎは欝なので無表情でかすかに会釈を返すだけだった。さかさまについてはたしかに落ちたら大変だなあと思った。しかしこれが功を奏した。このとき、落ちるわけがないと思った周りの動物と植物は重力がひっくり返ってみんな空に落ちていった。鳥や雲は地面に落ちてきた。 「あら、どうし