「赤毛のアン」を読み終えて、「世界的名作にはやはり同一の刻印というものがいつも押してあるのだなあ」というのを再確認した。同一の刻印――それは「天才の刻印」と言っても良い。「天才」と言っても書いたモンゴメリが天才というのではなく、「赤毛のアン」という作品自体が天才なのだ。小説というのはそういう自立性と人格を持っている。そして「赤毛のアン」はまちがいなく天才の小説の一つだ。 天才の刻印の一つに「風景」がある。作品中に美しい風景が描かれているか否かがその作品の価値を決める。その作品が「天才」であるかどうかを決めるのだ。全ての天才の作品には美しい風景が描かれている。これはもうあまねく共通している。「ドン・キホーテ」も「ハックルベリー・フィンの冒険」も「風と共に去りぬ」みんなそうだ。「赤毛のアン」にもそれが出てくるのは言うまでもない。そこでは特に夕景がよく出てくる。それはもうありとあらゆる夕景が出て