Xさんは残業代を請求しようとしたが、ひとつの壁に阻まれた。証拠がないのだ...。 「勤務時間を手書きで記載して会社に渡していました」 「それを会社が裁判所に提出してくれないんです...」 そこでXさんは、手書きの紙の提出を求めて提訴(文書提出命令の申立て)。無事に勝訴し、裁判所は会社に対して「勤務時間が記載された紙を提出せよ」と命じた。(東京高裁 R5.11.14) 今回は勝訴できたが、同様のケースにおいて必ずしも勝てるとは限らない。残業していたことを立証する責任は従業員にあるので、その事実を証拠として残しておくことも大切だ。以下、アドバイスを交えて解説する。(弁護士・林 孝匡) 事件の経緯会社は、東京で高級中華料理店を営んでおり、Xさんはそこに勤めていた従業員だ。 Xさんは、未払い残業代、交通費、立て替えた経費の支払いを求めて提訴した。裁判で立ちはだかったのが「残業代の存在を証明する証拠
