私は、今のところ、相対主義的視点をとるものであるが、厳密に言うと、価値次元相対主義である。このことはあまり議論されてきていないので、ここで述べておきたい。 普通にいう相対主義とは、文化相対主義と個人相対主義である。つまり、異なる社会によって善悪や真理の基準が異なり、人類に共通の絶対的善や絶対的真理はないというのが、文化相対主義の立場である。例えば、この立場からは、未開人の残酷的な奇習も野蛮な人権侵害として否定してならないという結論になる。また、真理として科学も呪術も同等であると見なすことになる。個人相対主義とは、人それぞれ個性があり、違うのでものの見方や価値観が異なるのは当たり前であり、人類に共通の絶対的善や絶対的真理はないという思想である。この立場からは、原理的に人に自己の考えや価値観を強制してはならないことになる。例えば、殺人を肯定する思想も、個人の自由であり、否定してはならないことに