言葉と真正面から向き合い磨き上げ、人物の活きる演劇空間を紡ぐ劇作家 物語は運命に翻弄され流転しながらそれでも光の射す方へと観衆を導く 芝居、ミュージカル、テレビドラマ。気鋭の脚本家は舞台の枠を超えて等身大の「人間」を描き出す。 この人の紡ぐ台詞は、一言たりとも聞き逃したくない──。劇場通いを日課とする筆者が敬愛する、気鋭の劇作家のインタビューが今回叶った。長田育恵。たとえば太平洋戦争期を舞台にした戯曲では、日本、そして当時は日本「だった」植民地に暮らした人々の息遣い、悲哀を克明に描いてきた。あるいは熾烈なスペイン内戦を題材とした戯曲では、戦禍を生き抜くためにもがく者たちの葛藤を詳らかに掬い取ってきた。詩人や思想家ら先達の生きざまに触れながら、「ひととしての矜持」を刻み記した戯曲もある。どの作品においても、登場人物は運命に翻弄され、思いもよらぬ岸辺に流れ着く。そのたびに、観る者の心は揺さぶら