「ボールをよく見て打て!」。野球経験者ならコーチに、一度は注意されたことがあるだろう。確かにボールから目が離れていてバッティングの精度が落ちることはよくあるが、実は見過ぎても逆効果になってしまう。科学がそれを証明している。 野球では、ピッチャーのボールが手を離れてからホームベースを通過するまでに0.5秒程度の時間しかない。最速165km/hを投げる、北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手の場合は約0.4秒だ。 しかし、この短時間にボールの軌道を見極めスイングするかを意思決定し、それから動いていたのでは絶対に間に合わない。人間ではモノが見えて認識をする脳内処理に0.2秒程度の時間が必要で、そこからバットを振るにも同程度の時間がかかるからだ。 つまり、バッターは反復的な練習によって「脳」が身体のコーディネーションを学習し、本人がボールの軌道を知覚するよりも短時間に動いてボールを打っている。