イピゲネイアに扮したマリー・アントワネット 王妃になった喜びを隠せない娘 先代のフランス王、ルイ15世が世を去り、ついに王妃となったマリー・アントワネット。 義祖父の死を、オーストリアにいる母帝マリア・テレジアに知らせる手紙には、前半には悲しみが綴られているものの、後半は、晴れて王妃となった喜びが隠し切れていません。 マリー・アントワネットからマリア・テレジアへ 1774年5月14日 愛するお母様 私たちの不幸にまつわるもろもろの事柄につきましては、メルシーがご報告いたしたことと存じます。この恐ろしい病気は、幸いなことに最後まで陛下の理性を曇らせることはなく、ご臨終は神への帰依の心を強固にさせるものでございました。新国王は国民の心をつかんでおいでと見受けられます。祖父様が世を去る二日前に、世継ぎの王太子は20万ふらんを貧者に分け与えるよう指示なさいましたが、これがまことに良い印象をあたえま