長編の政治リアリティーショーと考えれば、これ以上ない筋書きだったのではないだろうか。 11月9日午前2時40分。米CNNに短いテロップが流れた。「クリントン候補、電話で負けを認める」。その瞬間、共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏の会見が予定されていたヒルトンホテルの周辺は異常などよめきにつつまれた。純粋にトランプの当選に歓喜した人間もいれば、トランプ大統領が米国と世界に与えるであろう混沌を前にしたおののきもあったに違いない。 先の読めない展開と終盤のどんでん返しが優れたシナリオの条件だとすれば、今回の大統領選は100点満点がつけられる。 まず、登場人物の設定が素晴らしい。主人公のトランプ氏は不動産王国を作りあげたビリオネア。メキシコ移民をレイプ魔とののしり、元ミス・ユニバースを公の場で“ミス子豚”と呼ぶなど、大統領候補としてはあまりに粗暴だが、エリートが支配する腐りきったワシントン政
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