昨年11月30日、平壌。朝から軍や政府の各部署で、当局者たちが一様に青ざめる話が流れた。「昨日、54局の責任者と副責任者が公開処刑された」 54局。故金正日(キムジョンイル)総書記の妹の夫、張成沢(チャンソンテク)氏の資金源とされた部署だった。正日氏の懐刀だった張氏は2007年、朝鮮労働党行政部長に就任すると、「軍の利権を党に戻す」という正日氏の指示を受けて、同部傘下に54局を編成。鉱物資源の管理、銀行業務、貿易などの権限を独占していた。処刑された2人は、行政部の第1副部長と副部長で、張氏の側近とされた。 翌12月1日、別の話が流れた。「昨日は6人処刑された」。絶望した関係者の自殺も相次いだ。停滞する事業についての報告の際、側近たちが「張部長が承認してくれません」と釈明したことに金正恩(キムジョンウン)第1書記が激怒し、「チウォ・オプセ・ボリョラ(消してしまえ)」と叫んだという話も流れた。