映画『土を喰らう十二ヵ月』は白馬の廃集落で撮影されました。映画づくりは古民家を改装し、畑を耕し、野菜を育てることからはじまりました。1年半もの時をかけ、本物の食材を使い、本当に料理をしながら、二十四節気に寄り添って撮影は進み、そこには長野の風土が幾重にも織り込まれています。監督の中江裕司さんと料理を担当した土井善晴さんに映画のことや長野とのつながりについてお聞きしました。 白馬の廃集落と北アルプスとの出会い 映画の原案である水上勉さんのエッセイ『土を喰ふ日々』は軽井沢で書かれた本ですから、長野で撮ること、そして雪があることがロケ地の条件でした。ようやく見つけたのが白馬の菅(すげ)という廃集落です。現地を確認しに行った際は、膝まである雪のなか、除雪されていない道をビショビショになって進みました。 ようやく茅葺き屋根の家にたどり着いたとき、曇っていた空が晴れてきて、北アルプスがバーンと現れた。