『我輩は猫である』や『坊つちゃん』などの作品を生み出した明治時代の文豪、夏目漱石は同時に英文学者でもあった。 そして彼が英語教師として教鞭を執っていた頃、「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したのは有名な逸話である。 実はこのエピソード自体、後世の創作であるという説が濃厚だったりする。 にも関わらずこれだけ世間に浸透した背景には、「日本人は直接愛を伝えることができない」というそれらしい要素が詰まっているからだろう。 考えてみれば「I love you」の訳なんてものは「あなたが好きです」だけではない。 こと告白において、愛の表現は一通りではないわけだ。そこには人の数だけ訳が存在する。 たとえ漱石が「月が綺麗ですね」と訳したとしても、まったく異なる世界と価値観で生きている人たちからすれば、また違った「I love you」の訳が存在するはずだ。 競艇場にいるおじさんたちは、 「I