ブックマーク / saga135.hatenablog.jp (169)

  • 約定の蜃気楼  十三話 - 人生は花鳥風月

    二人が舞い戻った夕暮れ時の湖には珍しく人だかりが出来ていた。霧が晴れているとはいえ、このような幻想的な場所に人が群がっている光景は何ともぎこちなく感じる。 一体ここで何が始まるのだろう。真人はそう思いながらも敢えて訊こうとはしない。それは虎さんと口を利くのを怖れる、彼に対する嫌悪感は言うに及ばす、焦燥感に駆られた瞳の様子にも疑念を抱いていたからであった。 つまりは真人は未だ腹を括り切れていなかったという事になる。そんな真人の不安も他所に湖畔に佇む群衆の一人が真人に声を掛けて来た。 「いよいよ始まりますね、虎さんが気まぐれで行う花火大会が」 そう訊いた真人はなるほどとは思ったものの、何故気まぐれなのかという疑問も残る。花火というと一般的には夏を想定するものだが、この蜃気楼の町では季節がはっきりしない、無いといっても過言ではない。 そんな中で気まぐれだけで行われる花火大会、それも真人が四悪道を

    約定の蜃気楼  十三話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/23
  • 約定の蜃気楼  十二話 - 人生は花鳥風月

    久しぶりに会った瞳の珍しい仕種に愕いた真人であったが、彼は気の向くままに彼女を自分の身体で休ませてやり、優しく髪を撫で互いにその切なさを共有していた。 その後こんな地獄道に長居は無用と感じた真人は瞳の身体を起こし、取り合えず歩き出した。二人は何処へ行くとも考えないまま足に任せて歩いていた。道中瞳は全く口を利かない。そうして二人が辿り着いた場所はこの町で真人が初めに訪れた例の幻想的な湖だった。 閑散とした雰囲気を漂わすこの湖の様子も相変わらずだったが、全く人気の無いこの場所こそが今の二人にひと時の安らぎを与えてくれる事も事実ではあった。二人は湖畔にあるベンチに腰掛ける。湖の遙か彼方に視点を置いて瞳に語り掛ける真人の表情もまた憂愁に充ちていた。 「瞳、どうしたんだ? さっきから何も喋らないみたいだけど」 瞳は髪をかき上げ、まだ一抹の不安を抱えたような面持ちで答える。 「貴方こそこれで全部の道か

    約定の蜃気楼  十二話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/22
  • 三島由紀夫の魅力とは - 人生は花鳥風月

    日の長さ  夜が恋しい  天邪鬼(笑) 確かに日が長い事は有難い事で感謝しなければならないと思いますが、なるべく人目を避けて生活している自分としては早く夜になって欲しいような気もしないではありません。かといって冬になり余り日が短か過ぎるのもどうかなと思う所でもあります。 当に文句ばかりですね、こんな事ではいけません(笑) 今日6月22日はかにの日みたいです。大阪大阪市中央区に社を置き、かに料理の専門店を運営する株式会社「かに道楽」が1990年(平成2年)に制定。 日付は星占いにおいて「かに座」の最初の日が6月22日であることと、50音で「か」が6番目、「に」が22番目で当たることから。 とあります。自分もたまには美味しいかにでもべてリラックスしたい所ですが、それは何時の事になるのでしょうか 😒 という事で(どういう事やねん!?)自分が尊敬してやまない三島由紀夫氏のニュースが目に入

    三島由紀夫の魅力とは - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/22
  • 約定の蜃気楼  十一話 - 人生は花鳥風月

    「そうです、そのままじっとしていなさい、餓鬼達は決して貴方の身体に触れる事は出来ません、何も怖れる事はありません」 この神々しいまでの威厳に充ちた綺麗な声の主は一体何者なのだろうか。真人はその指示に従い、身体を仰向けにして微動だにせずその場に横になっていた。 餓鬼達は一斉に真人の方へ駆け寄って来る。さっき話していたシュードラだけはそれを傍観していた。腹を空かせていた餓鬼達は旨そうな料だと言わんばかりに目をギラつかせながら、何か鋭利な尖った骨のような武器を手にして真人の身体を削ぎ始めようとした。 その刹那真人の身体からは凄まじいまでの金色の光が放たれ、眩しさのあまり目を覆っていた餓鬼達の身体はみるみる内に溶け始めた。 「うわぁぁぁー、何だこれはー! 身体が溶けて行くー! 止めてくれー!」 真人を襲おうとした餓鬼達は完全に消滅してしまった。光は消え真人は身体を起こした真人はさっきまでとは違う

    約定の蜃気楼  十一話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/21
  • 約定の蜃気楼  十話 - 人生は花鳥風月

    西軍の陣から数十分歩いただろうか。遙かに霞んでいた敵陣にようやく辿り着いた一行は快く迎え入れられ、手厚いもてなしを受けた。取り合えずと一献授かった真人は悠長に構えているなと感心しながら酒を飲んでいた。 敵総大将の榊原泰幸はその恰幅の良い身体でどんと座り込んで、微動だにしない様子で何故か大将の神原利昌を差し置いて真人に語り掛けて来た。 「貴公は実に聡明な顔をしておられるの~、いや気に入った、素晴らしいご尊顔じゃ」 真人は大して照れる事もなくいきなり題に入った。 「お褒め頂き恐悦至極で御座います、では気に入って頂いたお礼に一つ上策を献上仕りたいと存じます」 榊原はそんな真人の出過ぎた振る舞いを咎める事もなく、あくまでも大らかな態度で訊いていた。 「ほう上策とな、それは是非伺いたい」 真人も何ら躊躇う事なく答え出した。 「和睦です、今直ぐ停戦して手打ち和解して下さい、そうしなければ貴軍は間

    約定の蜃気楼  十話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/20
  • 約定の蜃気楼  九話 - 人生は花鳥風月

    何時ものように朗らかな表情で真人を見つめる瞳ではあったが、今日は何処となく少し神妙な風にも感じられる。瞳はその長い髪を荒野の強風に靡かせながら語り掛けて来た。 「これで3つの合格認定を頂いたのね、貴方なら次の試練にも耐えられると思うわ、でも最後の試練は......」 真人は瞳の顔を訝しそうに見ながら訊いた。 「確かに最後は難しいだろうな、でも大丈夫さ、さあ、行こう!」 真人はこれまでの3つの試練を超えた事に依って明らかに成長していた。それは瞳にも十分分かる事で頼もしいぐらいだった。それでもまだ少し頼りなさも残る真人でもあったが、瞳は彼の前向きな精神に懸けた。 「そうね、行きましょう」 二人は歩き始めた。その歩みは今までのような気を含んだ重い足取りではなく、これからの人生に大きく羽ばたいて行く希望を胸に秘めた陽気で勇ましい、軽やかな足取りであった。 荒野に連なる陶しい密林を抜けるとそこに

    約定の蜃気楼  九話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/19
  • 限りなく透明に近いブルー<村上龍>を読み終えて - 人生は花鳥風月

    肌寒さ  嬉しく思う  梅雨の雨(笑) いやいや、梅雨というものは来蒸し暑いというイメージが強かったのですが、昨日辺りから少し肌寒さを感じるぐらいです。自分としては6月中旬はこれぐらいの気候で丁度良いとも思うのですが。 これも偏に昨今の地球が暑くなり過ぎて、それを抑える為の天の優しい業(わざ)であるようにも思える所ですが、もしそうであれば尚更天に感謝しなければとその有難さを痛切に感じる所です(笑) という事で(どういう事やねん!?)限りなく透明に近いブルー。この超大作のレビューをしてみたいと思います。 あらすじ 舞台は東京、基地の町、福生。ここにあるアパートの一室、通称ハウスで主人公リュウや複数の男女がクスリ、LSD、セックス、暴力、兵士との交流などに明け暮れ生活している。 明日、何か変わったことがおこるわけでも、何かを探していたり、期待しているわけでもない。リュウは仲間達の行為を客観的

    限りなく透明に近いブルー<村上龍>を読み終えて - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/19
  • 約定の蜃気楼  八話 - 人生は花鳥風月

    血と臓物とは正にこの事か。巨大な鰐に飲み込まれた真人の眼前には見るも恐ろしい闇の世界が拡がっていた。ここが胃袋なのか、胃粘液の強力な粘着きに依って手足の動きを封じられた真人には何ら抗う術が無かった。だがこのままでは何れ死んでしまう。真人は精一杯力を振り絞って懐に忍ばせてあったナイフで鰐の身体を突き刺そうと試みたが、ナイフはいとも簡単に弾き飛ばされ何の役にも立たなかった。 真人は観念して死を覚悟した。その時漆黒の闇に閉ざされていた鰐の身体の中が突然明るくなり、向こうから一匹の小魚が真人の方へ駆け寄って来た。メダカかウグイか、はっきりは分からなかったがその魚は何か笑っているように見えた。 「貴方ですね、最近この町に来たという人間は」 こんな魚まで喋る事が出来るのか。だが真人はこの魚の何処か人懐こいような雰囲気に安堵を覚え、気軽に話出すのだった。 「そうです、今死を覚悟していた所です」 魚はそん

    約定の蜃気楼  八話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/18
  • 約定の蜃気楼  七話 - 人生は花鳥風月

    瞳は無言のまま真人の顔を凝視し、射貫くような鋭い眼光で彼の両目を見つめ出した。そんな彼女の姿に動じた真人は不甲斐なくも瞳と接吻する覚悟をするのだった。しかし瞳は何時になってもその目を閉じようとはしない。寧ろ、いやに攻撃的なその様子は真人を威嚇し、脅かすようにも感じられる。 危機感を感じた真人は声を発しようとしたが時既に遅し。瞳から目を反らす事が出来なかった真人は口が利けなくなってしまった。何故だ、催眠術にでも掛けられたとでもいうのか。意識までも遠のいて行く。あの時と同じだ、この町へ来たあの時と。あの時は音が聴こえなくなっってしまったが今度は喋る事が出来なくなってしまうのか。 このままではダメだ。真人は例のナイフを手に取りまた足の爪先を刺そうとした。だがその刹那、瞳が真人の手を握り制止するのだった。瞳はもう一度真人の目を見つめてから喋り始めた。 「貴方には負けたわ、これで術は解けた筈よ」 真

    約定の蜃気楼  七話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/17
  • 約定の蜃気楼  六話 - 人生は花鳥風月

    就寝前の祈祷を終えた真人は部屋に戻り床に就く。静かな修道院は彼を安眠させるのに十分だった。熟睡中の真人ではあったが久しぶりに夢の世界に誘われる。それは彼の今までの人生を振り返るような過去の経験が物語る夢であった。 真人は高校生の頃から交際していた智子という女性と二十歳過ぎに結婚したのだった。それは傍から見ても実に仲睦まじい夫婦で身内は勿論、職場の人達や同級生、世話になった学校の先生、近所の住民と、大勢の人達からに祝福を受けていた二人の姿は何時も光り輝き、みんなの希望であった。 二人は何処へ行くのにも常に一緒で、綺麗な景色を見ては共に感動し、面白い事があれば共に笑い、亦苦難に遭遇すれば共に悩む。人生の全てを共感、共有する事が出来る二人は正にお似合いのカップルだったのだろう。そんな二人の行く手には一切の翳は無く、そのほのぼのとした愛らしい生活ぶりにはメルヘンチックな漂いさえあった。そしてそれこ

    約定の蜃気楼  六話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/16
  • 約定の蜃気楼  五話 - 人生は花鳥風月

    窓外に見える外の風景は既に日が暮れかけ、一面に広がる野の草花は光の加減か紫色にも見える。そして少し強めに吹いて来た風は真人の逸る気持ちを一層駆り立てるような勢いがあった。 真人は指示されたように取り合えず料理をテーブルに運んで事の支度を整え、司祭やシスター達に声を掛け、自分自身も事に赴く。事室に入って来た一同はテーブルを囲み祈りを捧げてから席に着いた。真人も見様見真似で同じように振る舞い事を始める。 この日の夕の献立は白身魚のムニエルとサラダとスープとパンであった。流石は修道院だけあって実に質素なメニューではある。だが結構美味しい。事中は一切口を利いてはいけないという修道院の仕来りに従い一同は黙々としていた。 事が終わるとそこでまた祈りが捧げられる。真人も心の中で感謝していた。そして皆が部屋を後にしてから片付けに勤しむ真人。器を厨房に運び込み、殆ど汚れていないテーブルを拭

    約定の蜃気楼  五話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/15
  • RIZIN28 感想  ~無常感   - 人生は花鳥風月

    移り行く  夜は儚くも  無常かな(笑) おはようございます^^ いや~当に月日の経つ早さには愕くばかりですね。もはや6月も中旬、あと半月もすれば7月、2ヶ月後は盆。そして盆が過ぎればまた正月と。 何処かで時を止めたいという衝動に駆られる事もあります(笑) これも甘ってれた考え方ですよね。しっかりと現実を直視しなければなりませんね 😒 という事で(どういう事やねん!?)で一昨日6月13日のRIZIN28の感想でも綴ってみたいと思います。自分のようなヘタレのトーシローの意見なので多少横柄で底の浅い記事になるとは思いますがご了承のほど宜しくお願い致します^^ 試合結果&感想 jp.rizinff.com 結構面白いカードがあり白熱した試合が行われていましたが、その中から自分が感心のあった試合だけを見て行きたいと思います。 (LOSE)朝倉未来 vs. クレベル・コイケ(WIN) 2R 1分

    RIZIN28 感想  ~無常感   - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/15
  • 約定の蜃気楼  四話 - 人生は花鳥風月

    晴れ渡った蒼い空一面には無数のひつじ雲がまるで天かける星々のように果てしなく連なっており、その下には見渡す限りの緑の広野が拡がっていて、遙か彼方には微かに海までが見える。 草をべながら悠々と歩く牛の姿や、香ばしい土の匂い、風に優しく揺らめく樹々(きぎ)、実り豊かな農作物の数々。この目を覆い尽くさんばかりの和やかで素晴らしい光景は、真人の少し沈んでいた心を一掃してくれた。 瞳に連れて来られた時、こんな風景は全く目に入らなかった。またしてもこの町特有の不思議な術にでも掛かってしまったのだろうか。しかし眼前に映るこの素晴らしい光景に感銘を受けた真人は己が狭量を恥じる。そして彼にここで生きて行く事を決心をさせるのであった。 それは理屈では証明出来ない自然の無限が人の有限を包み込み、共鳴し、厳しくも大らかに教え諭す偉大なる業(わざ)に他ならない。真人は思わず昂揚し、司祭にその喜びを告げるのだった。

    約定の蜃気楼  四話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/14
  • 約定の蜃気楼  三話 - 人生は花鳥風月

    相変わらず朗らかな瞳ではあったが湖を後にする時、何やら意味深な事を告げるのだった。 「あ、それとね、この湖は底なし沼なの、通称地獄の沼って言われてるわ、でも底まで辿り着く事が出来たら元の世界に帰れるという言い伝えもあるの、それが出来た人は今まで一人もいないけどね」 真人は冗談半分で訊いていたが、これまでの経緯からも満更嘘ではないような気もする。それを敢えて教えてくれたという事は、俺の勇気を試してでもいるのだろうか。真人は帰りたいやら帰りたくないやら迷っていたが、正直な気持ちとしてはもう少しでもこの女性と一緒に居たいという思いが勝っていたのは自明の事実であった。 次に湖から微かに見えていた神社に着いた。高さが2丈ほどある立派な鳥居を潜り参道を進んで行くとこれまた立派な境内があり、そこには樹齢何千年にも及ぶであろう大きな松、楠、榊が威風堂々と屹立している。 真人はまだ少し朝露を含んだ榊に手を当

    約定の蜃気楼  三話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/13
  • 約定の蜃気楼  二話 - 人生は花鳥風月

    翌朝目を覚ました真人は環境の違いに仰天した。天井がある、壁がある、床がある、窓がある、そして自分は布団に寝ている。ここは一体何処なんだ、昨日湖で会った老人はその後何処へ、訳が分からない。窓外に見える景色からしても恐らくここは家の2階であろう。真人は部屋を出て恐る恐る階段を下りて行った。 下りながら聞こえて来る音がある、まな板を包丁で叩く音だ。誰かが料理でもしているのだろう。真人はどう声を掛けていいのやら分からず、取り合えず 「おはようございます」 とだけ挨拶をしてみた。すると料理をしていた若い女性が愛想の良い態度で、笑みを浮かべながら語り掛けて来た。 「おはようございます、よく眠れたかしら?」 真人は照れながら一応のお礼を言った。 「はい、有り難う御座います、ところで自分は何故このような所に? 訳が分からないのですけど?」 女性は尚も朗らかな表情で言葉を続けた。 「はい、出来ました、取り合

    約定の蜃気楼  二話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/12
  • 約定の蜃気楼  一話 - 人生は花鳥風月

    あれからもうどのくらいの月日が経ったのだろう、幾日歩き続けていたのだろう。最期に物をべたのは何時だったろう、昨日水を飲んだ気もする。でも大して空腹感もない。自分でも何がどうなってしまったのか分からない。唯一はっきり覚えている事といえば自分の名前と微かな思い出ぐらいなものか。 高坂真人25歳。彼は或る悲惨な経験をした事で自暴自棄になり、何もかもを忘れたくなって家を飛び出したのだった。それでもまだ辛うじて生きている。死なない限りは生きて行くしかないのだ。 その想いは彼をただ夢遊病のように何処までも歩き続けさせるのであった。 だがまだ若い真人は決して道中でへたり込むような真似はしなかった。このまま頑張って歩き続けてさえいれば何時か何処かに辿り着ける。いずれは報われる。一見現実逃避のように見受けられる彼の所業も実はその限りではなく、寧ろひたすら歩き続ようとするその様は、この先にある何かを求めよう

    約定の蜃気楼  一話 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/11
  • まほろばの月  最終章 - 人生は花鳥風月

    初志貫徹。今正に阿弥の懐は成し遂げられた。積年の恨みであった目黒は阿弥人の手に依って葬られ、ヤクザの大親分待鳥さえも抹殺された。この事は或る意味素晴らしい功績で、輝夜一家は一躍ヒーローになったといっても過言ではないような気もする。 まだ胸の高鳴りが抑えられない阿弥ではあったが、3月下旬の海風は冷たくも清々しく、その場を鎮静化させる漂いがあった。 阿弥は二人の外道を蹴り堕とした海面に向かって唾を吐いた。 「ぶくぶく腹だけ肥えやがって、この豚野郎どもがっ!」 一同に歓喜の声は無かったが、静寂の裡にも阿弥が思いを遂げた事に対する喜びは自ずと一人一人の表情が物語っていた。椎名が無言で阿弥の肩を優しく叩く。そして一行は粛々と車に乗り込み立ち去るのだった。 車中で阿弥が初めて口を開く。 「椎名よ、今度ばかりは流石に察も直ぐに動き出すだろうよ、腹括っとかねーとな」 それでも椎名は悠然とした面持ちで答

    まほろばの月  最終章 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/10
  • まほろばの月  二十六章 - 人生は花鳥風月

    決行の刻(とき)は来た。午後7時過ぎ、既に日も暮れ天高く姿を現した半月を眺めながら仕事に赴く。一意専心。一行はただ阿弥が懐を遂げる為のみにその身を賭して動き出すのであった。 手筈通り一家の者達を二手に分け、まずは山友会の待鳥宅を襲う組は椎名を筆頭にして直、健、柾、そして椎名が連れて来た数名の子分達に依って組織され、目黒には阿弥、波子、沙也加の三人が例のように華麗に変装して待鳥が雇った娼婦として近づく。椎名の組は黒の目出し帽に黒の手袋、黒のブーツに黒の上下作業服と、黒づくめの装備で颯爽と待鳥宅に襲撃を掛けた。 玄関前には屈強な門番が立っていたがそんな奴等は椎名と子分達が瞬く間に始末し中へ入る。中で当番に勤めていた連中も一瞬にして薙ぎ倒し、宅内の事情に詳しい椎名は何ら迷う事なく真っすぐに待鳥が居る部屋に到着した。椎名は子分達に待鳥の身を拘束させて厳つい声でカマシを入れた。 「親分さん、余計な

    まほろばの月  二十六章 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/09
  • 主観性と客観性、二元論と多元論 - 人生は花鳥風月

    風吹けば  心安らぐ  初夏の空(笑) いやいや、暑くなりましたね 🥵 まだ6月上旬のこの時期に初夏というワードを用いる事は不意ではありますが、この暑さでは致し方ないかなと思う次第です。せめて風が吹いてくれれば少しは涼しくなるのですが。自分は団扇で我慢しています^^ ですがそんな気候とは裏腹に、心が熱くなるような事象はなかなか起きてはくれないみたいです。それどころか暑い、暑苦しい、むさ苦しい、醜い、亦氷のように冷たい、冷徹なニュースばかりで嫌になって来るぐらいです。 またまた硬い内容の記事になってしまう事、ご容赦願いたいと思います^^ news.yahoo.co.jp 五輪開催の是非 まずはオリンピック開催についてですが、自分は反対です。その理由としてはやはりこのコロナ渦でそこまで無理してまで開催する価値、意義があるのかという話ですね。 これは現状日の世論の大半を占めているのではない

    主観性と客観性、二元論と多元論 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/09
  • まほろばの月  二十五章 - 人生は花鳥風月

    一殺多生。美子の死と、英二の遺言も空しく絶縁された清吾の処遇は一家にとって当に功を奏するのだろうか。だが清吾は阿弥の事を全く恨みになど思っていない、それどころか阿弥が懐を遂げる事を祈る清吾の想いは、波子や阿弥人にも伝わって来るぐらいであった。とすれば阿弥の決断は寧ろ清吾に対する優しさであったようにも思えないでもない。だが美子の方は.......。 3月下旬のまだ寒さの残る夜の路上で、阿弥と波子は凄惨な状態で眠っている美子の姿を後目に憂愁をたたえながら立ち去って行くのだった。 隠れ家に戻った二人は何も喋らずぼんやりと佇んでいた。二人の想いは今更口に出すまでも無かったのだが阿弥は敢えて波子にその心の内を問う。 「どう思う? 今日の事」 「どうと言われましても致し方ない事だと察します」 「ふっ、お前らしいな、でもお前清吾が好きだったんだろ? これからどうするよ?」 「彼とは別れます、そして

    まほろばの月  二十五章 - 人生は花鳥風月
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    suoaei 2021/06/08