■若き女性店主が謎を解く 情緒あふれる北鎌倉の町に、ひっそり佇(たたず)む木造家屋。そこは小さな古書店だ。うら若き店主の栞子(しおりこ)は極度の人見知りだが、本の知識と洞察力は人一倍。彼女が古本にまつわる謎を解き明かしていく連作シリーズが、ただ今絶好調である。 古書に関する雑学は知識欲を刺激し、一冊の本を巡る人間ドラマは味わい深い。栞子の鮮やかな推理も痛快だ。また、彼女とアルバイトの青年の間に漂う恋の予感が甘酸っぱい。つまり本書は老若男女誰もが楽しめる要素のつまった“知的&胸キュン”ミステリーなのだ。 著者は中高生向けの電撃文庫で小説を発表している作家。一昨年、版元がさらに広い読者層を対象にしたメディアワークス文庫を創刊。著者にも執筆を依頼すると「古書店を題材にしたい」と提案が。実は三上氏は古書店で働いていた経験があり、稀覯本(きこうぼん)についても相応な知識の持ち主だという。 第1巻には