日本は国際的に見て失業率が低く[*1]、また平均的な労働時間は減少傾向にある[*2]。つまり日本の労働問題のキモは、他国のような失業率の高さではなく、ごく一部に劣悪な労働環境が存在することだ。一部の職場では「過労死」と「賃金の低下」という、一見すると相反する現象が同時に起きているようだ[*3]。 言うまでもないが、ごく一部であることが、それを放置していい理由にはならない。殺人は交通事故死に比べてわずかだが、取り締まるべき犯罪だ。劣悪な労働環境も同じだ。 なぜ日本では、劣悪な労働環境が生まれてしまうのだろう? ちょっと考えてみると、これは不思議だ。 日本の経済成長が鈍化して久しいが、実質GDPがマイナスに転じたわけではなく、購買力平価1人あたりGDPは現在でも伸び続けている[*4]。その一方で、日本の労働人口は現在、減少している[*5]。経済規模が一定もしくは成長している状況で労働人口が減れ