🌷保曾呂倶世利《ほそろぐせり》というのは変な名の曲であるが、 それをおもしろく笛で源氏が吹くのに、 合わせる琴の弾き手は小さい人であったが音の間が違わずに弾けて、 上手になる手筋と見えるのである。 灯《ひ》を点《とも》させてから絵などをいっしょに見ていたが、 さっき源氏はここへ来る前に出かける用意を命じてあったから、 供をする侍たちが促すように御簾《みす》の外から、 「雨が降りそうでございます」 などと言うのを聞くと、 紫の君はいつものように心細くなってめいり込んでいった。 絵も見さしてうつむいているのがかわいくて、 こぼれかかっている美しい髪をなでてやりながら、 「私がよそに行っている時、あなたは寂しいの」 と言うと女王はうなずいた。 「私だって一日あなたを見ないでいるともう苦しくなる。 けれどあなたは小さいから私は安心していてね、 私が行かないといろいろな意地悪を言っておこる人があり
