酒造家で生まれ育った少年は、酒蔵を継ぐ未来を思い描くようになった。だが、想像していた順調な承継ではなかった。父との対立が深まり、一時は酒蔵から離れた。最期まで和解できなかった父の通夜で頭に浮かんできたのは、酒に対する父の思いだった。 桜井博志 [さくらい・ひろし] 1950年山口県周東町(現・岩国市)生まれ。73年に松山商科大学(現・松山大学)卒業後、西宮酒造(現・日本盛)に入社。76年に父が社長を務める旭酒造に入社したが、父と対立して退社。父が亡くなった84年に復帰して社長に就任。純米大吟醸酒の分野で日本一の酒蔵に育て上げた。2016年に社長を息子に譲り会長に就任。(写真=栗原 克己)