雑記 サークル「稀風社」から2012年11月に「文フリ15」内で頒布された合同誌『稀風社の冒険』に掲載された小説『失われてゆく子供達』の加筆訂正版です。 * 失われてゆく子供たち またひとり子供が獣に食べられる。町の人口は一人減る。 わたしたちは町に住んでいる。壁に囲われていない町に住んでいて、町に果てはない。町は海に囲われているという。わたしはまだそれを見たことがない。自転車に乗ってわたしたちがどれだけ移動をしても、海には決してたどり着かない。だから町には果てがない。 海が見たかった。過去形で言い切ることはわたしにはまだできなくて、いまもまだ、たぶんそうおもっている。この町の夜は獣が現れるから、野宿などをしたものはすべて死ぬ。移動は日中に限られる。悪い子供、おろかな子供たちは大人に厳しく言い聞かせられていながらも、禁を破り、必ず行方不明になる。獣は死骸を町に返してくれて、町には