将棋界における師匠と弟子の関係性が注目を集めている。スポットライトが当たったのは、のちに将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)を受賞した『師弟~棋士たち 魂の伝承~』(野澤亘伸著/光文社)の存在が大きかっただろうか。 現在、ABEMA将棋チャンネルでは「第1回ABEMA師弟トーナメント」が放送されている。そこで、同トーナメントにも出場している谷川浩司九段と都成竜馬七段について、『師弟』から一部を抜粋して紹介する。(#1から続く) 「あの頃の自分に会ったら、叱ってやりたいです」 小学5年生で全国小学生名人戦で優勝した都成竜馬は、同年に谷川浩司九段に弟子入りした。永世名人資格保持者の谷川にとって、初めての弟子であり、都成は入会時から注目を浴びる。「谷川門下って、やっぱり凄いことなんだ」。子ども心にも、それは誇りだった。だが奨励会では思うように勝てない時期が続く。