退職した途端の悲劇 40年近く続けてきた、毎朝、満員電車に揺られる生活が、ついに終わりを迎えた。思う存分趣味を楽しみたい、行きたかった場所に旅行に出かけたい、長年会えていない友人にも会いたい。そのために会社の再雇用も申し込まず、もちろんアルバイトやパートなどもってのほか――。そんな道を選ぶと、ドツボにはまりかねない。 埼玉県在住の木村正司さん(仮名・62歳)は、新卒で中堅商社に入社し、長年繊維畑を歩んだ。 2人の子どもは独立し、いまは妻と二人で暮らしている。2年前に定年退職した際、会社の再雇用は申し込まなかった。 「趣味や旅行を存分に楽しもうと意気込んでいたんです。ただ、最初の数ヵ月は友人と飲んだり、元同僚とゴルフをしたりと楽しんでいたんですが、次第に手帳の予定が埋まらなくなった。気づけば誰からも連絡が来なくなり、ずっと家で過ごすようになりました」 妻は友人と出掛けたり、カルチャースクール