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ブックマーク / hondana.mainichi.co.jp (1)

  • 毎日新聞社:今週の本棚 : 辻原登・評 『悪人』=吉田修一・著

    すべての「小説」は「罪と罰」と名付けられうる。今、われわれは胸を張ってそう呼べる最良の小説のひとつを前にしている。 渦巻きに吸い込まれそうな小説である。渦巻きの中心に殺人がある。 脊振(せふり)山地を南北に貫く国道263号線の県境の山中にある三瀬(みつせ)峠。佐賀と長崎と福岡を結ぶ道路がここで交わる。峠道は蒼(うっそう)とした樹々におおわれている。トンネルがある。 二〇〇二年一月六日、九州北部で珍しく積雪のあった日、長崎の若い土木作業員が、福岡に暮らす若い女性保険外交員を絞殺し、この三瀬峠に遺棄したとして長崎県警に逮捕された。 ……とこのように語り出された物語の鳥瞰(ちょうかん)的視点は、JR久留米駅近くの理髪店、被害者の実家の内部へと一気に急降下する。いましも、福岡の保険会社の寄宿舎にいる佳乃(よしの)が母親に電話を掛けてきたところで、屈託ない長話になる。数時間後に彼女は殺される。 こ

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