オーストリアのドキュメンタリー映画「ユダヤ人の私」(A Jewish Life、2021年)が間もなく日本で封切られる。ヴィーンの映画制作会社「ブラックボックス」の4監督による歴史証言ドキュメンタリーで、「ゲッベルスと私」(A German Life、2016年)の続編に当たる。1942年から敗戦までナチス=ドイツのヨーゼフ・ゲッベルス宣伝相の秘書だったブルンヒルデ・ポムゼル(1911~2017)が、103歳にして自らの生い立ちやゲッベルスとの日々を語った「ゲッベルスと私」は、日本では2018年に公開され大きな反響を呼んだ。 ナチス権力の中枢に身を置いた女性の証言による「ゲッベルスと私」とは対照的に、「ユダヤ人の私」は、ホロコーストを生き延びた106歳のユダヤ系オーストリア人、マルコ・ファインゴルト(1913~2019)が実体験に基づいて、ナチス犯罪の実態と、戦後オーストリア人の歴史意識の