●生麩糊をつくる ─伝統的な表装作業に利用されてきた接着剤の作り方─ 1.はじめに 生麩糊は、日本の伝統的な装幀技法である表具(表装、経師)作業に長く利用されて来た接着剤。今では文化財の修復に欠かせぬ接着剤の一つとして、海外の修復家も紙資料の修復に利用している。ここでは、東洋絵画の修復にとって肝心要の接着剤である生麩糊の作り方を紹介しよう。 生麩糊の成分は小麦粉から抽出したデンプンで、簡単にその精製方法を紹介すると、小麦粉に少量の塩と水を加えて良く練り、餅状にしてからしばらく置いた後、水中で揉むようにして洗って行くと、小麦粉の中にグルテンが凝縮、分離して、沈澱してゆく粉が生麩糊の原料となる。ちなみに水中に沈むことから沈生麩(じんしょうふ)または沈糊(じんのり)ともよばれる。精製した粉自体は沈(じん)と呼ぶこともある。余った(食品としてはこっちが主役だが)グルテンは麩まんじゅうの原料にな