思えばこれまで28年間、想定外の出来事なんて、あんまり起こっていない気もする。 それもそのはず。私はいつだって自分の人生に、ある程度の保険をかけて、自分でハンドルをがっしりと握り、そこそこの安全ルートを進んで来たからだ。 「この高校ならば合格圏内だろう。行きたい部活の強豪校だし」 そう思って受験した、実家の近所にある公立高校。入学後は予定通り吹奏楽部に入部し、高校生らしい夏を過ごした。 「卒業後に作家活動をする同級生も多いけれども、自分は就職をする。手に職を付けよう」 そう決めて、美大を卒業して正社員として入社したベンチャー企業では、Webディレクターとして3年間働いた。OLらしいスーツを着て、新橋や銀座にプレゼンに行った頃が懐かしい。 「フリーランスになるにしても、業務委託でいくつかの仕事を兼任しよう」 会社を辞めて独立したといっても、私の場合は非常に「安全な独立」だった。いくつかの会社