東京中日新聞に記載した庄司薫論です 庄司薫の文学 〈好きな女の子とは、しない〉ための戦い 川田宇一郎 かわいい女の子たちからモテモテ、頭も良くて、有名ブランド高校にいて、頼れる友達もいて、しかも健康で深刻な悩みもなく、家はお金持ち。こんな奴は、今時の言葉でいうと「リア充」(実生活が充実していること)である。 一九六九年の芥川賞受賞作の庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』(以下、『赤』)の内容はまさにそれ。主人公の「薫くん」は、学校群導入以前の最後の日比谷高生であり、東大に苦もなく受かって当然の「お行儀のいい優等生」だが、学生運動激化による東大入試中止にぶつかってしまう。最後に東大以外に行くをよしとせず「ぼくは大学へ行くのやめたんだ」と、幼なじみの「由美」に報告し、二人は手をつないで歩き、終わる。 ★ だから、このミリオンセラー作品は、多くの読者に受け入れられながらも、本当は少数の学歴エリート