1996年、O157で死者が出た時は、大騒ぎになりました。大腸菌というなじみの菌の仲間になぜそんな恐ろしいものがあるのだろう。研究室で使われているK-12株と比べた結果、大腸菌ゲノムとしての共通の基本骨格(410万塩基対)があり、それに外からの遺伝子を取り込んで、さまざまな株になっていくことがわかりました。それはどこからどうやって入ってくるのか。ゲノムの中にたくさん存在する、どう見てもファージ(ウイルス)としか見えないDNAが怪しい・・・・・・ゲノムの進化と多様性のダイナミズムの基本が見えてきます。 おなじみの大腸菌も、じつは多様な菌株の集団なのだ。通常の大腸菌は動物や鳥類などの腸管に棲息する常在菌であり、ヒトに対する病原性はない。遺伝子組換え実験などに広く利用されているK-12株はその代表である。しかし安心してはいけない。腸管病原性大腸菌や尿路病原性大腸菌、新生児の髄膜炎を起こす菌などさ