唐突に書きたくなったので、大学院生時代の思い出を書く。「唐突に書きたくなった」以上のきっかけはない。 オレが通っていた大学院である日、OBやOGをまじえたパーティーが開かれた。おたがいに初対面の者が多いパーティーのつねとして、簡単な自己紹介と近況報告がはじまった。そのなかでひとりの女性が、子供向けの絵本か何かを翻訳したことと、その訳書がちょっとしたベストセラーになったことを伝えた。その時点では周囲の者は彼女の業績を称えたが、彼女がパーティーを中座して帰宅したあと、場は「糾弾大会」と呼びたくなるような雰囲気に変容した。決してアカデミックではない書物を訳したこと、それがベストセラーになったこと、しかもそれを自慢げに(オレにはそう感じられなかったが)語ったことが、嫉妬と怨嗟の対象になったのだ。彼女がどのくらいの印税を得たのか、執拗にこだわる者までいた。 いまとなっては「糾弾大会」と化した理由は、