光る君へ 第10話「月夜の陰謀」前編 寛和二(986)年 六月。 「決行は6月23日」 「すぐではないか! 支度が間に合わぬ」 安倍晴明の提案に兼家は 焦りを見せた。 「23日は歳星が二十八宿の 氐宿を犯す日」 策謀を得意としている 晴明といえど本来の役割は 陰陽師である。 当然ながら吉凶を予測し それを重視するのも 重要な仕事だ。 「12年に一度の犯か」 「この日は全ての者にとって よき日にございますが 丑の刻から寅の刻までが 右大臣様にとって 最も運気隆成の時」 「その日を逃せばもはや 事はならぬのか」 「さようにございまする。 この日を逃せばはかりごとは 成し遂げられず 右大臣様には災いが 振りかかりましょう。 そして帝はこの後もずっと 御位にとどまることと なりましょう」 そう言われてしまえば、 否とは言えない。 「分かった。 23日、丑の刻だな」 兼家はその夜、 一同を集め帝を内
