ようやく今学期の授業が終わった。いつもと別に変わりはない。ただ、今回は15年半勤めた東北芸術工科大学で最後の授業なので、それなりの感慨がなくもない。倫理学の授業が、事務当局の手違いで、補講の授業と重なってしまい、私の教室が急遽変更になったので、授業に出席した学生は三人だけだった。大部分の学生は、休講になったものと思い込んで、帰ったようである。学生諸君には、たいへん申し訳ないことをしてしまった。 最初この大学に赴任した時は、学生ともども新しい伝統をこの地に築くことを、それぞれに思い描いていたと思う。思えば、それは夢のような、ユートピアの可能性を信じることの出来た数年間であった。 今から四十年近くまえ、私自身が学生生活を始めた頃は、ちょうど学園紛争が始まった時代だった。当時の学生の主張が全面的に正しかったとは思わないし、良心的な先生はたくさんいた。そのころ大学当局を厳しく指弾していた学生たちが