人間の言葉を話す、仲間をだます、道具を考え出す――。動物たちは、私たちの想像を超えた知力をもっている。科学者が動物と二人三脚で続けてきた数々の研究で、その実力が少しずつ明らかになってきた。 動物に心の内を直接聞いてみたい―。1977年に大学を出たばかりの研究者アイリーン・ペパーバーグが始めた実験は興味深い。彼女は1歳のヨウム(オウムの一種)を研究室に持ち込み、アレックスと名づけて、人間の言葉を教えることにしたのだ。 当時、多くの科学者は、動物に考える力などないと思っていた。ロボットと同じように決まりきった反応しかせず、思考や感情とは縁がないと決めつけていたのである。いや、うちの犬は違いますよ、と言う人もいるだろう。だが、そんな主張はなかなか通らない。動物に思考力がある、言い換えれば、まわりから得た情報をもとに行動する能力があると科学的に実証するには、どうすればよいのか。 「そのために、アレ