赴任のため北京の空港に着いたときのことだ。税関検査で荷物をX線装置に通すと、女性職員に「本が大量に入っているので調べさせてください」と笑顔で言われたので快く応じた。 最初はパラパラと本をめくりながらの比較的気楽な雰囲気だった。だが、しばらくしてこちらが記者だと分かると顔色が変わり、周囲の職員を呼んで1冊ずつ確認を始めた。約30分後、数冊の本を手に「これらは持ち込めません」と告げられた。時間もなかったので「放棄する」と宣言すると事無く終わった。 興味深いのは線引きだ。持ち込めなかった本には「香港 返還20年の相克」(遊川和郎著)や「南シナ海でなにが起きているのか」(山本秀也著)など時期的に注目されるキーワードがあった。「中国政治 習近平時代を読み解く」(毛里和子著)など習近平国家主席の名前が入った本も複数あった。一方、手元に残った本には「幸福な監視国家・中国」(梶谷懐、高口康太著)という判断