専門的な論文を読むときは、いきなり細かい話を読む前にサーベイ論文を読むといい。経済学の場合は、Journal of Economic LiteratureやJournal of Economic Perspectivesなどにサーベイが出ており、そこで紹介されている代表的な論文から読むのが効率的だ。本書も、サブプライム危機についての素人向けサーベイとしては便利だ。 サブプライムの原因として、FRBの低金利政策とか格付け会社のでたらめな審査などがよく槍玉に上がるが、そういう話は第Ⅰ部にまとめられており、大して新味はない。おもしろいのは、第Ⅱ部のコアになっているRajanの論文だ。そこでは2005年に、サブプライム危機をほとんど予言するような分析が行なわれている。 金融工学の発達によってファイナンス産業は急速な成長を遂げたが、小幡績氏も指摘するように、そこには一つのパラドックスがある。金融